早稲田大学石田研究室


カーナビゲーションにおける情報伝達の効率性
山本 陽平
                   
1 はじめに
 近年,カーナビゲーション(以下カーナビ)の普及に伴い運転者はこれまで以上に高い情報処理負荷にさらされるようになった.この結果,運転時のカーナビの操作・注視が原因となり交通事故が発生する可能性がある.このような事故を減らすためには,カーナビの情報を運転者に伝達しやすくすることが重要である.渡邉(2007)は,カーナビ画面4種類,提示時間を0.5秒,1秒,1.5秒,2秒の4種類を,それぞれの組み合わせで5回ずつ提示し,その視認性を比較した実験を行った.その結果,なるべく少ない視認時間で,2回以上に分けて視認するのが望ましい,という結果が出た.しかし,この実験では,提示画面のノイズ数(読み取ってもらう交差点名以外の地名),読み取ってもらう文字数が統一されていない,また,試行の順序がランダムになっていないという問題点が挙げられる.よって本研究では,これらの問題点を改善し実験する.

2 実験
 被験者に実際に運転していると想定してもらい,パソコンのディスプレイに表示されるカーナビの画面を見てもらった.カーナビの画面は経路案内されているもの2パターン用いた.また,提示時間を0.5秒,1秒,1.5秒,2秒,2.5秒,3秒の6種類行い,それぞれの組み合わせで5回ずつ提示した.その際に,渡邉(2007)で,本来一番視認回数(各試行で質問にすべて答えてもらうまでにかかった回数)が少なくて済むと考えられる提示時間2秒では,提示時間1.5秒の時よりも視認回数の平均値が高くなった.その結果を踏まえ,提示する画面の順番は,画面の種類も提示時間もランダムで行った.各々について質問用紙に回答してもらい,データを分析した.
渡邉(2007)は,実際にカーナビをデジタルカメラで撮影した画面を提示した.しかし,交差点名の文字数やノイズの数によって,視認回数,エラー率に影響を与えた可能性がある.そこで,提示画面には,Adobe Illustrator 10,0,3を用い,実際に目的地を設定し,経路案内されている同じ文字数の様々な交差点の手前にいると想定された画面を作成した.また,ノイズの数も統一した. 
画面の種類は,渡邉(2007)で特に視認性が高かった,平面地図と立体図の2タイプに設定した.この際,できるだけ実際のカーナビと同じ条件にするため,平面地図と立体図のノイズの数は異なってしまった.

 実験課題は,設定された秒数の間ディスプレイ上に提示された情報を読み取り,質問用紙に答えてもらうといったものである.
 被験者に読み取ってもらう情報は,「次の交差点の案内方向」,「次の交差点までの距離」,「次の交差点の名前」である.また,各試行の最後に,その提示秒数,提示画面のタイプでの理解しやすさを5段階で評価してもらった.
 実験の器材は,ノートパソコン(16インチ),液晶シャッター(トーヨーフィジカル),タイマーを使用した.
 本実験には,18歳〜26歳(平均20.8歳)の20名に参加して頂いた.なお,普通自動車免許所持者,未所持者はそれぞれ10名だった.
実験の手順として,教示に続き,パソコンの画面から実際の車の座席からカーナビまでの距離とほぼ同じである80cmの位置に設置した椅子に座ってもらい実験を始めた.また,画面と椅子の間にはタイマーを繋いだ液晶シャッターを設置し,提示時間を操作した.
 各画面の試行の前に,練習試行を行った.練習試行では,画面の説明をし,被験者の方が理解してから行うようにした.
 各試行において,同じ秒数の同じ画像を5回ずつ提示し,実験課題をしてもらった.

3 結果・考察
 視認回数を従属変数とし,免許の有無,画面種類,提示時間を要因とした,3要因の分散分析を行った.その結果,提示時間と画面種類に有意な交互作用が見られた(F(5,90)=2.351,P<0.05).よって下位検定を行った.

提示時間0.5秒と1秒に有意差は見られなかった.また,2秒,2.5秒,3秒にも有意差が見られなかった.1秒以下は画面を見る時間が短すぎるため差が見られなかったと考えられる.また,2秒以上画面を見ても情報の取得量はあまり変わらなかった.また,危険度が増す可能性があるだけであると言える.
また,提示時間0.5秒の時だけ,平面地図と,立体図に有意差が見られた.このことから,提示時間0.5秒という短い時間において画面種類AよりもBの方が情報を取得しやすいということがわかる.画面Bは,ノイズの数が少なく単純な造りになっていて,短い時間で情報を取得できるためであると考えられる.
次に,理解度を従属変数とし,免許の有無,画面種類,提示時間を要因とした,3要因の分散分析を行った.しかし,有意な交互作用は見られなかった.また,画面種類,提示時間にそれぞれ有意な主効果が見られた.理解度は主観的なものであり,人によって感じ方が違うためこのような結果になったと考えられる.

4 結論
運転中にカーナビの経路案内を見る時,情報をより効率的に得られるようにするためには,カーナビを立体図にし,1秒から2秒の間で2回以上に分けて見るのが,最も効率的である.

5 引用文献
渡邉拓人,2007,車載ナビゲーションにおける人間への情報の伝達性について(早稲田大学卒業論文)
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