早稲田大学石田研究室


インターフェイスに適した警告音についての考察
西尾峻

1.はじめに
我々は日々,様々な生活機器から鳴らされる音に囲まれて生活している.これらの音は,ある動作が完了したことを知らせる役割や,注意や警告を呼び起こす役割を持っている.それらは何らかの意図を持って人に情報を伝えるために鳴らされている.しかし,それらの音は機器やメーカーによる違いによって様々で,結果的にどの音がどのような意図で鳴らされているのかとてもわかりにくくなっている.生活機器から鳴らされるこれらの警告音は本当に適切な音であるだろうか.小松原・大滝・水谷(1995)は吹鳴・休止パターンと聴取印象との関係を調べている.また林・福原・山口(2002)によって周波数やパターンがどのような機能音に適しているかの検討が行われている.これまで音色に限定した警告音の実験は行われてこなかったため,本実験では音色に重点を置いて調べていきたい.

2.目的
PC を操作する際に鳴る警告音を人がどのように感じるかを調べ,音色と警告機能の関係を検討する

3.方法
警告音の作成基準と作成方法音色に重点を置くため,わかりやすい擬音語表現のできる音作りを行った.山内・高田・岩宮(2003)はサイン音の機能イメージと擬音語表現の実験を行っているため,参考にした.山内らによると,警報のイメージは長音によるもの,報知のイメージは拗音によるもの,また長音と撥音の伴う音は終了を表すと言うことが示唆されていた.ただし山内らの実験では音素材をもとに実験を行っていたため,一つの純粋な波形を用いてそれらの音の作成を試みた.擬音語表現で言うと,濁音,半濁音,拗音に当たる3種類の音,ブー,ピー,シャーを作成した.それぞれ単純なノコギリ波,サイン波,ノイズ音である.またそれに加えて,それぞれが減少していく音,ブーン,ピーン,シャーンの計6 種類の音を作成した.発音時間は各実験音とも1 秒に統一した.警告音の作成にはcycle of fifth 社のbeam2002 を用いた.また,高齢者や障害者に配慮した2002 年のJIS 規格の「消費生活製品の報知音」(JIS S 0013)では報知音の中心周波数は2.5kHz を超えないことが望ましいことが規格化されているため,それに準じた.特徴など表1に示す.

質問紙の内容
音の印象を表す形容詞対,警告機能に関係する形容詞対を23 個選定し,さらに年齢と性別の質問を加えた.質問項目を表2 に載せる.分析にはSD 法を用いる.

被験者
18〜25 歳(平均21.6,SD2.06)までの学生および社会人23 名(男性12 名,女性11 名).
実験概要
実験は静かな部屋で行った.被験者は椅子に座り,ノイズキャンセリングヘッドフォンを着用し,警告音を聞きながら質問紙でアンケートに回答してもらった.各実験音は6 秒毎に提示し,被験者の評価が終了するまで繰り返した.被験者には実際にパソコンを操作するときを想定させた.

4.結果と考察
まずそれぞれの被験者の質問項目ごとの回答得点の平均値を元に,警告音間で相関分析を行った.音の波形形状の同じ同士,ノコギリ波(r=0.48 p<.05),サイン波(r=0.47 p<.05),ノイズ(r=0.80 p<.01)それぞれのパターン違いの音間で正相関が見られた.また,ブーとシャーで正相関(r=0.80 p<.01),ブーとピーンで逆相関が強く見られた(r=-0.68 p<.01).

続いて,主因子法,直交バリマックス回転による因子分析を行った結果,4 つの因子が抽出された(累積寄与率は61.57%).回転後の因子行列が表3 である.それぞれ「迫力因子」,「美的因子」,「効果因子」,「速度因子」と命名した.「効果因子」は警告音の効果を示すものである.
次に各警告音の被験者全員の値を平均化した因子得点を表4 に示す.

6 種類の音のうち,ブーの音と,ピーの音は警告機能を強く持つことがわかった.迫力因子の得点は,ブーの音は非常に高いが,反対にピーの音は非常に低い結果となった.音の力強さや迫力の有無などは,警告機能とは無関係であることが言える.また,それぞれの音が与える印象が大きく違うので,強く危険を知らせるときなどにブーの音を使うなど,場面により使い分けることができるであろう.ノイズ音は警告機能を持たないことがわかった.
連続音と減少していく音では,仮説通り,印象に似たような印象の傾向を与えるようである.しかし,減少していく音にすることで,警告機能は弱くなる一方,美的因子の得点が高くなり,不快感を下げることがわかった.警告音は本来,人に異常を知らせるものであるため,効果因子の得点が高いほど有効であると言える.しかし,パソコン含め家電製品などから聞こえる警告音が必ずしも踏み切りの音のように強く異常を知らせる必要もないので,快−不快の観点からも,美的因子の得点の高い音も効果的であると言えよう.これらを考えると,突然始まり突然終わる連続音よりも,だんだんと減少していく音が注意を与え,なおかつ不快な気持ちを与えないという点で有効であることが言える.

5.今後の課題
今後は,作成した実験音の減少していく音に関しても,今回は1 秒以内に収縮していく音のみであったが,0.5 秒,2 秒など秒数を変えたり,段々と立ち上がっていく音などバリエーションを増やした実験も必要であると考えられる.今後も警告音および報知音は多様化していくと考えられる.その中で,メーカーをこえて警告音は統一されるのが望ましい.警告音デザインの基礎研究として,音色と警告機能の関係を調べたが,アクセシブルデザインなどの考えが浸透しつつあることも考え,適した警告音を今後も模索していくべきである.

6.引用文献
小松原明哲・大滝真紀・水谷美香1995「家庭用電気製品の報知音に関する研究」日本人間工学会関西支部大会講演論文集,77-80
林健太郎・福原博篤・山口勲2002「家電製品における報知音についての検討」日本騒音制御工学会研究発表会講演論文集,209-212
山内勝也,高田正幸,岩宮眞一郎2003「サイン音イメージと擬音語表現」日本音響学会誌,59,4,192-202
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