早稲田大学石田研究室


赤信号時の矢印が人に与える影響
浅賀 貫太

1.はじめに
信号機は複雑かつ多様な交通状況を整理するためのものである。しかしながら信号機のある交差点でも多くの事故が発生しているのが現状である。信号機に関する研究を調べてみると、日本の交通信号灯の視認性・色性・輝度値の問題点を指摘した中嶋(1998)の研究や、色覚異常者がLED 式信号機の赤色と黄色を識別できるかどうかを明らかにした鏑木ら(2005)の研究、渋滞が発生しにくい信号制御システムの提案をした今井ら(2006)の研究などがあるが、信号機と運転者の判断の関係を明らかにした研究や矢印信号機に関する研究はない。

2.目的
そこで本研究では矢印信号機が人の判断にどのような影響を与えるのかを実験を通して明らかにすることを目的とする。

3.実験
3-1.被験者
大学生25名。被験者の方は全員免許を所持している。また運転頻度は週1回以上である。平均年齢21.08 歳。運転暦平均2.48 年。
3-2.提示画像
信号、歩行者、対向車の条件を変化させた信号機のある交差点画像を8 種類4 つずつ、合計32 枚作成した。画像はIllustrator とPhotoshop を使って作成した。撮影した車・人・信号機の画像をPhotoshop で加工し、Illustrator で作成した交差点画像に合成して刺激画像を作成した。被験者にはこの刺激画像を見せ、右折できるかどうか判断を求めた。刺激画像の種類を表1に記す。刺激画像の1 例を図1 に示す。図1 ではE の画像である。


3-3.実験方法
測定はVisual Studio.net を使用して作成したオリジナルのプログラムを用いて行った。実験によって調べたことは、反応時間と誤答率である。実験を行う前、以下の4点を注意点として口頭で伝えた。1.時間の前後を考えないで、絵の表示された瞬間において右折できるか、できないかを判断すること。2.3 方向矢印点灯中の赤信号での対向車は赤信号であること。3.赤信号右矢印点灯時、歩行者信号は赤であること。4.反応時間と誤答率を測定しているので早く正確に試行をおこなうこと。実験は、アンケート→練習試行→本試行の流れで行った。アンケートでは、年齢・運転暦、運転頻度を伺った。練習試行は、3 種類の画像をランダムな順序で表示した。回数に関係なく被験者が理解できたことを確認できるまでやってもらった。本試行の画像もランダムな順序で表示した。図2に本試行で用いた実際のフォームを示す。


4.結果・考察
青信号時(A〜D)と矢印信号時(E〜H)の平均反応時間と誤答率についてt 検定を行った。その結果、平均反応時間に有意差が見られ (t(24)=3.07, p<.01)矢印信号の判断時間が有意に長かった(図1)。しかし、誤答率には有意差は見られなかった。通常の信号は色のみを判断すればよいが、矢印信号は信号機の色と矢印の方向の両方を判断する必要があるため、このような差が見られたと考えられる。


5.結論
右矢印信号は対向車も歩行者も赤であるから、交通を分離できる点は有効である。しかし、今回の実験から青信号に比べ矢印信号のほうが反応時間がかかるということがわかったので、その点を考慮して矢印信号機を設置する必要がある。

6.今後の課題
今回の実験では被験者が若い人ばかりだったので、今後は高齢者などをふくめた多くの被験者を対象に研究を行う必要がある。また、今回は静止画を使用しており、実際運転しているような状況ではない。今後はシュミレーター実験や実車実験を行う必要がある。

7.引用文献
今井洋介・加藤泰典・長谷川孝明(2006). 高度デマンド信号制御方式 電子情報通信学会技術研究報告pp.49-54.
鏑木真・高松衛・中嶋芳雄・三間賢一・中島賛太郎(2005). 色覚バリアフリー用LED 式交通信号灯の視認性向上に関する基礎的研究 平成17 年度照明学会第38 回全国大会pp.205-206.
中嶋芳雄(1998). 日本の交通信号灯の視認性と輝度分析 日本色彩学会誌 pp.76-77.
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送