早稲田大学石田研究室


信号機のない交差点での自動車の動きについての一研究

渡辺 篤詞


1 はじめに

現在,最も多い車同士の事故は,信号機のない交差点における交通事故である.これは全事故数の約20%にものぼっている.信号機のない交差点では,停止標識や道路の幅,その他道路交通法によって,優先道路と非優先道路とに分類される.しかしそれを無視して交差点内に車が進入するというのが現状である.本来であれば優先されるべき車が交差点に近づいたときに,非優先道路側の車が交差点に進入した場合に交通事故は起こる.私は過去に2度,このケースで交通事故にあったことがある.1度目は夜おそくのことで,信号機があったのだが,黄色の点滅と赤の点滅という状態で,信号機のない交差点と同じような状況であった.私は助手席に乗っていて,前方の信号機は赤の点滅であった.しかし車は減速のみで交差点に進入し,右方向からきた車と接触事故を起こした.運転者の話では,減速して左右の安全確認を行ったところ,車がいなかったのでそのまま交差点に進入したとのことであった.見通しが悪かったため,車に気がつかなかったのである.2度目も夜のことであり,ことの気も私は助手席にいたのだが,車は非優先道路側から交差点に進入し,左からきた車と衝突事故を起こした.幸い相手の車が急ブレーキをかけたので大きな事故には至らなかったが,このとき私たちの車は減速もせずに交差点に進入したのを覚えている.これらの経験から,信号機のない交差点だからこそ個人で高い意識を持って道路状況を考えなければならないのだと思い,その実情を知るために調査を行うに至った.

2 調査目的

信号のない交差点において,優先道路・非優先道路のそれぞれについて,車は一時停止や減速・左右の安全確認を行うのか,また交差する道路の交通状況によって,それはどのように変化するのかを調べることを目的とする.

3 調査方法

(1)日時
 12月6日・7日
 10時〜12時,13時30分〜15時30分

(2)場所
 見通しの良い十字路,見通しの悪い十字路,見通しの良いT字路,見通しの悪いT字路をそれぞれ1箇所ずつ調査した.
 ・ 東京都稲城市東長沼2299番
 ・ 東京都国立市富士見台2丁目13番
 ・ 東京都国立市富士見台2丁目4番
 ・ 東京都稲城市向陽台6丁目11番

(3)方法
 交差点全体がうつるように2方向からビデオカメラで撮影をして,その映像から,交差点を通過した車において,1台ずつ以下の項目について調べた.ただし,安全確認状況についてはビデオカメラの映像で小さくて確認できない可能性があるので,撮影時に同時にチェックを行った.チェックは専用のシートを作成し,使用した.
 ・ 停止しているかどうか
 ・ 減速しているかどうか
 ・ 前方から車がきているかどうか
 ・ 右方向から車がきているかどうか
 ・ 左方向から車がきているかどうか
 ・ 進行方向はどちらか

(4)分析
 シートからそれぞれの項目について台数を数え,交差点別,道路別,優先/非優先道路別に表を作成し,検定を行った.検定にはχ2検定を用いた.

4 結果

道路別,優先/非優先道路別,そして交差点別に項目ごとの表を作成し検定を行った.その結果,優先/非優先道路において次のような場合に有意な差があらわれた.
・ 見通しの良い十字路
 交差車両がある場合の減速確認,停止確認状況.交差車両がない場合の減速,減速確認,停止確認状況.
・ 見通しの悪い十字路
 交差車両がある場合の停止確認状況.交差車両がない場合の減速確認,停止確認状況.
・ 見通しの良いT字路
 交差車両がある場合の減速,減速確認,停止確認状況.交差車両がない場合の減速,減速確認,停止確認状況.
・ 見通しの悪いT字路
 交差車両がある場合の減速,停止確認状況.交差車両がない場合の減速確認状況.
また,優先側では全体の約20%が減速確認・停止確認を行っているのに対し,非優先側では約95%が行っていた.

5 考察

車同士の交通事故の最も多いパターンは,信号機のない交差点での事故である.信号機のない交差点では,道路は優先道路と非優先道路とに分けられる.つまり事故が起こる可能性としては,非優先道路側の車両が,優先道路側の車両に進路を譲らなかった場合というものが考えられる.そのため今回の調査では,非優先道路側に道を譲らない車両が多いのではないだろうかという予測があった.しかし,実際に調査を行いデータをまとめてみると,予測とは少し異なった結果があらわれた.非優先道路側を通過した車のうち,45.1%が停止と左右の確認を行っていた.原則や確認を行っていた車両もあわせると,全体の約95%が優先道路側に対して何らかの意識を持っているというものが明らかになった.しかしそれでも事故が起こってくるということは,意識の問題ではなく,行為の内容に問題があるのではないかと考えられる.

まず交差車両がある場合,停止と確認を行っている車両は多かったが,この停止位置が停止線を越えている場合がほとんどであった.このことについては細かくまとめるということをしなかったので,具体的な数値で表すことはできないが,記憶している限りでは,停止線で止まった車はいなかったように思える.それほど皆停止線を無視しているのである.停止線というものは,それを越えて止まった場合,交差車両と接触する危険性があり,また,交差している道路の交通状況や信号機の有無などから,停止と安全確認を行わずに交差点に進入した場合に,事故がおきる危険性があり,それを避けるために設けられているのである.しかし停止線の手前からでは,交差道路に車がいるかどうかは,見えない場合が多い.またそのために交差点に設置されているミラーも,角度や日差しの関係などで交差道路側の車の存在の有無を確認できないという場合が多いだろう.こういう場合は停止線で一旦止まった後減速して交差点に進入し,交差道路側に車がいないことを確認してから通過するようするのがよいのではないだろうか.

交差車両はあるが,減速のみで停止をしなかったという車もいたが,これは2つの種類に分類される.減速し交差側の車両をやり過ごしてから交差点を通過するタイプと,自分が先に通過するタイプとにわかれた.前者は交差側の車両が直進する場合は問題ないが,手前に曲がってきた場合,対向車線にふくらんできたり,また内輪差で対向車線に入ってきたりして,接触する危険性がある.後者は交差側の車両の速度に対する判断ミスで事故につながる可能性がある.この場合は,優先道路側から見ると,交差側に車両がいても止まってくれるだろうと判断し,減速せずに交差点に入るだろう.

次に交差車両がない場合であるが,この場合は減速と確認を行って交差点に入るというケースがほとんどで,停止をした車両はあまりみられなかった.これにも2つの種類があり,もしも交差車両がいた場合に停止することのできる速度のものと,そうでないものにわかれた.後者の場合は事故につながる危険性が大きい.また少数ではあるが,原則も確認もしないで交差点に進入する車もいた.非常に危険である.

今回の調査でわかったことは,日優先道路側を通行する車両は,一応は優先道路側のことを考えているということである.しかしその意識が甘いのである.つまり,非優先道路だから止まるというのではなく,事故の危険性を考えて止まるようにしなければならない.また,非優先道路側は割と高い確率で減速・停止を行っているということは,逆に考え有線道路側からみた場合,おそらくドライバーは自分の車は止まらなくても大丈夫だろうと考え,減速したり確認をしたりするケースは少ないだろう.この意識の甘さを改善していかない限り,信号機のない交差点での交通事故は減少していかないだろう.

参考文献

(1) 神田直弥・石田敏郎:なぜ一時停止しないのか−詳細分析による運転行動の検討,日本交通心理学会平成12年度春季大会,第61回
(2) 神田直弥・石田敏郎:バリエーションツリーによる交通事故の分析(その2)−変動要因を基準とした無信号交差点事故の検討,交通事故調査・分析報告書,平成11年度


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