早稲田大学石田研究室


視野の三次元的表現とその評価

菅原 淳史


1. 目的

人間が外界を視認する際の視界,特に,航空機,鉄道,自動車,船舶などの移動体からの視界を表現する方法として従来使われてきたものは,いずれもスタティックな状況を前提としており,また,二次元的表現が主となっている.したがって,現実の場面とはかけ離れた表現となり,量的な表現が可能とはいえ,移動体中の人間が感じる視界とは異なったものとなっている.さらに,時間経過につれての変化が捉えにくく,新たな設計をする際の検討資料としても使いにくいものである.

本研究は,このような,移動体からの視覚表現の従来方法に対し,まず,人間が実際に視認している場面と同じ,三次元的表現であること.そして,移動体の移動や,人間の動きの要素も考慮したダイナミックなものであること.という観点から,人間の視認状況をより現実場面に即した形で表現する方法を開発し,適用していくことを目的とする.

本稿はそのための第1段階としてのパイロットスタディである.したがって,新たな知見を見出したり,対策等を提言するものではなく,あくまで新しい方法論を提示し,その有効性について論じるものである.

2. 方法

実際の交差点において道幅等の計測を行い,得られたデータをもとに交差点の三次元図を作成する.一方,車両は市販の乗用車(3ドアハッチバック車)で,そのレイアウト図(平面図,側面図,後面図)をもとに三次元図を作成する.

これらの三次元図を用いて,あらかじめ定めた条件で,交差点の直進および右左折状況をシミュレートした三次元的表現の動画を作成する.この際カメラ位置を単眼の基準アイポイントにおき,運転者の視野映像をシミュレートできるようにする.

3. 結果と考察

運転者の目の位置からの三次元的表現ということで,かなり実際の視界に近い表現が可能なようである.ひとつ目立った問題点としては,屋根の部分の見え方が大きく,また距離が遠くに見えるというものがあった.これは動画作成に使用したEIASの仕様による部分が大きいと思われる.まず,今回はカメラの視野角度を130°に設定したが,これにより上下左右均等に130°の視野となる.しかし,人間の視野は上下方向よりも左右方向の方が広いので,結果的に違和感のある画像となってしまったと思われる.さらに,130°としや角度を比較的広く設定したために,決まった範囲内により多くの部分を表示しなければならなくなり,当然個々の物体は小さく表示されることになる.これは,一眼レフカメラなどで,より広角のレンズを使った場合と同じような状況であるが,さらにEIASのカメラを通してみた画像は歪まないので,このような結果になったのではないだろうか.しかし,道路の幅が狭くなった場合に,道路の左端が,車体の先頭部分において,より車体中心線に近い位置に見えるという実際の状況が,三次元的表現でも同じように表現できているところを見ると,画像の中の世界での車両対外部環境という部分においては問題ないようである.ゆえにシミュレータなどのように,この映像を現実のものと置き換えて使用する場合には,問題が多々あるように思われるが,視界評価などの用途には適しているだろう.

ピラーなどによる死角についても,運転者の目の位置からの三次元的表現による効果は大きく,平面図ではわからない,ピラーがどのような角度で見えるのかという細かい部分まで考慮できる.さらに動画であるため,時系列的な変化の要素も加えられる.よって,横断者が死角に入ってしまうかどうかという問題も,それに加えて,どれくらいの間死角に入っているかという部分まで,横断者のモデルを作り,実際に確かめることができる.

4. 今後の課題

今後の課題としては,まず,モデリングインタフェースに改善の必要がある.今回用いた点を抽出する方法には限界がある.

次に,動画作成に必要な,車両の走行条件,運転者の視線移動に関するデータを収集しなければならない.走行中の車両の速度や位置の変化,運転中めまぐるしく変化する運転者の視線,そして,アイポイントも運転姿勢の変化によって移動する.これらのデータを収集して,よりリアルな視界表現ができるようにしなければならない.

さらに,道路等の外部環境についても,基本的な交差点の他に,カーブ,上り坂,下り坂,踏み切り,立体交差など,様々なものがある.それらのデータをより多く収集し,いろいろな状況での視界表現が可能となるようにしなければならない.


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