早稲田大学石田研究室


点滅表示時における画面表示周波数に関する一研究

佐川 浩規


1. はじめに

視界に提示された数多くの刺激の中から、ひとつのターゲットを発見する行為を視覚探索という。視覚探索を行う上では、ターゲットの誘目性は重要となってくる。そういった流れの中で、動きを持ったターゲットについての誘目性の検討、研究も行われてきている。そういった研究の中の一つ早稲田大学人間科学部1998年度卒業研究「点滅表示による誘目性への影響について」の中で中島は点滅表示の誘目性に関する実験を行い、ターゲットの点滅表示は誘目性を高める上で有効であるとした。この実験ではターゲットである文字に枠を設定し、それを点滅させていた。この研究を受けて、本実験ではターゲットとなる文字そのものを点滅させたり、点滅時の周波数を変えることで誘目性をさらに高めることは可能かどうかを調査、検討することにする。

2. 実験目的

本実験では
a.点滅表示を用いた時のターゲットの点滅周波数の違いがターゲットの誘目性に及ぼす影響
b.ターゲットの周囲に設定した枠のみならず、文字そのものを点滅させた場合のターゲットの誘目性に及ぼす影響
c.bの場合で,枠,文字の点滅パターンを変化させる事によるターゲットの誘目性に及ぼす影響以上の三点を調べることを目的とする。

3. 実験

3−1 被験者

被験者は正常な視力(矯正も含める)を有する心身共に健康な大学生、大学院生18名を対象とした。男性9名 女性9名 計18名 年齢(20〜26歳)である。

3−2 実験機材

・パーソナルコンピュータ  Inter Celeron プロセッサ 500MHz メモリ 64MB
・マウス
・SOTEC P801ディスプレイ IIYAMA A901H

3−3 実験場所

早稲田大学人間科学部 520暗室

3−4 実験方法

パーソナルコンピュータを使用して、ディスプレイ画面上に1から20までの数字をランダムな場所に表示した。その中から10の数字をターゲットとして被験者に探索させた。その時に条件に応じてターゲット及びその他の数字、そして数字の周囲に設定された枠を点滅させた。被験者がターゲットである10を発見し、クリックするまでを1試行とし、反応時間を計測した。そして各条件ごとに15試行ずつ行い、途中休憩を挟んでこれを2セット繰り返した。なお、被験者にはなるべく姿勢を一定に保ってもらい、ディスプレイと目の距離を40〜60cmに設定した。
(条件は全部で13条件、計390試行)
※すべての数字には枠が存在し、枠を点滅させる条件も存在する。
※各刺激は全て重なり合う事のないようにした。
※点滅パターンは文字と枠が同時に点滅するのか交互に点滅するかを設定するもの。

表1 実験条件の内容
実験条件の内容

4.実験結果

4−1 各条件の反応時間の平均

実験において計測された反応時間は以下の図1のようになった。

※条件IDの説明
1.周波数同じ、とは、ターゲット(=10)と、周囲のその他の数字の点滅周波数が、同じである(共に5Hz)であることを示している。
2.T周波数低い、とはターゲットの点滅周波数は(1Hz)で、その他の数字は5Hzで点滅している事を示している。
3.T周波数高い、とは、ターゲット点滅周波数は5Hzでその他の数字は1Hzで点滅している事を示している。
4.(同時)とは、枠文字を両方とも点滅させる際に、枠と,文字を同時に点滅させるという事を示している。
5.(交互)とは、枠文字を両方とも点滅させる際に、枠と,文字を交互のタイミングでに点滅させるという事を示している。

各条件の反応時間の平均

4−2ターゲット周波数と枠、文字の点滅の間の関係

ターゲット周波数と、枠、文字の点滅について関連性を見るために2要因分散分析を行ったところ、有意差が見られたので、下位検定を行なった。その結果、以下のようになった。

表2 平均値の差の検定
平均値の差の検定

4−3 各条件と非点滅時の比較

(1)枠、文字の点滅条件と 非点滅時の比較
 枠、文字の点滅パターンと、何も点滅しないときの反応速度の差を見るために条件:枠文字点滅、条件:点滅なし、との間でt検定を行った結果(両側検定t(53)=−4.92,p<0.01)で有意な差が見られた。

(2)枠のみ点滅時と非点滅時の比較
 続いて、条件:枠のみ点滅、条件:点滅なし、との間での差を見るためにt検定を行った結果(両側検定t(35)=−9.35,p<で有意な差が見られた。

(3)文字のみ点滅時と、非点滅時の比較
 最後に条件:文字のみ点滅、条件:点滅なし、との間での差を見るためにt検定を行った結果、(両側検定t(46)=−5.51,p<0.01)で有意な差を見る事ができた。

4−4 重相関分析

これまでに出てきたデータを、各要因の影響度を調べるために重相関分析にかけた(反応時間を目的変数、周波数のパターン、文字、枠の点滅を変数化して予測変数とした)。その結果が次ページの表である。

表3 重回帰分析表
重回帰分析表

重回帰分析表

表4 分散分析表
分散分析表

重回帰分析表の結果、周波数の偏回帰係数は−0.534(両側検定:t(161)=8.07, p<.01)、文字の偏回帰係数は0.154(両側検定:t(161)=2.02, p<.05)、枠の偏回帰係数は0.012(両側検定:t(161)=0.16, p>.10)となった。この結果から、ターゲットの周波数を変えること、そして文字を点滅させることに関しては効果は有意であったといえる。しかし、枠の点滅に関しては効果は有意なものではなかったといえる。なお、このときの回帰式全体の説明率は.31で有意であった。(F(3、161)=23.38, p<.01)

4−5 点滅の仕方の違いの比較

本実験においては、枠、文字ともに点滅させているが、枠と文字を同じタイミングで点滅させる(条件名:同時点滅)か、それとも交互のタイミングで点滅させるか(条件名:交互点滅)という二つの条件下において、反応時間に差がでるかを調べた。この場合も、二つの条件下での反応時間を調べ、t検定にかけた。しかし、(両側検定t(105)=0.00,p<0.1)で有意な差は見られなかった。

5. 考察

5−1 周波数と点滅の関係

ターゲットの点滅周波数に関してはターゲット点滅周波数が周りに比べて高い、ターゲット点滅周波数が周りに比べて低い、ターゲット点滅周波数が周りと同じ、の順に反応時間は速くなる(=誘目性が高い)ということが判明した。これはターゲット点滅周波数を変えることによって、ターゲットが目立ち、反応時間は速くなるが、点滅周波数を低くしてしまうと、文字の消えている時間が比較的長いために文字周波数が高い場合と比べて反応時間が遅くなったと思われる。また、文字が点滅する条件(条件:文字のみ点滅と枠文字点滅)の場合、枠が点滅する場合よりも、反応時間は遅くなった(=誘目性は低い)ということがわかった。これは、周りの枠ではなく、文字そのものが点滅している事により、10というターゲット数字を視認しにくかったと考えられる。また、条件:枠文字点滅、枠のみ点滅、文字のみ点滅のいずれもが条件:点滅無しのときよりも反応時間が速かったため、条件ID1〜10までの間では、次のような順位付けができる。

表5 各条件間の順位
各条件間の順位

表のように、枠のみを点滅させて、ターゲットの周波数を高く設定すると、反応時間が速くなった。(=誘目性が高かった)この事から、ターゲットは文字を点滅させず、枠をつくって、それを点滅させ、その点滅周波数をあげる(=点滅の間隔を短くする)ことが有効であると考えられる。

5−2 枠、文字が両方とも点滅する場合においての点滅方法の比較

枠と文字が両方とも点滅する際に交互点滅させるかと、枠と文字を同時点滅させるか、との間には有意差は見る事はできなかった。これは、点滅のタイミングを変えてみても、文字が消える事に変わりは無く、そのためにターゲット認識に時間がかかるという事で共通していたからだと思われる。

5−3 各要因が反応時間に及ぼす影響

各要因が反応時間に及ぼす影響を調べるために、重回帰分析を行ったが、その結果ではターゲットの点滅周波数と、枠の点滅が有意であることがわかった。この為、ターゲットの周波数を周囲のものと変えておく事は点滅表示を行う上で、非常に重要だといえる。また、文字を点滅させてしまうと、ターゲット認識に時間がかかってしまい、誘目性に影響が出てしまうものと思われる。

6. 結論

本実験の結果から次のことが導き出される。

1.点滅表示を用いる場面ではターゲットの周波数を変える事が有効である。特に点滅表示が多く用いられている場合、ターゲットの周波数は周囲のものより高くすることが誘目性をあげる上では望ましい。
2.点滅表示を用いる際は、文字そのものを点滅させることは、ターゲットそのものの認識に時間がかかるためにターゲットの誘目性を高めるという観点からは望ましくない。そのため、ターゲットの周囲に枠などを設定し,それを点滅させることは有効であると言える。
3.点滅表示時に枠、文字を点滅させる場合、枠、文字の点滅パターンを変えてみても、上記の2.と同じような理由から、ターゲットの誘目性を高める上では、あまり有効ではない。

7. 今後の課題

今回の実験では中島の実験のときと同様に点滅周波数を1Hz、5Hzと設定したが、実際よりもやや点滅の間隔が短い。よって実際に使われる周波数帯での実験も行うべきだと考えられる。また、他の誘目性を高めると思われる要因(色、形)などとの相関関係を調べることも今後の課題の一つである。今回の実験では、被験者の感想から、「目が疲れる」といった感想が出た。今後の実験では誘目性の追求のみならず、眼の生理的負担なども考慮した実験設定を行う必要があると考えられる。

8. 参考文献

1.視知覚  松田隆夫著 培風館 1995
2.早稲田大学卒業論文「点滅表示による誘目性への影響について」 中島智人 1998
3.視覚の情報処理 −見ることのソフトウエア− K.T.スペアー S.W.レムクール共著 苧坂直行他訳 サイエンス社 1986
4.人間の情報処理と生理心理学 松田俊著 多賀出版 1993
5.図説エルゴノミクス 野呂影勇著 日本規格協会 1990
6.Information processing in visual search: A continuous flow conception and experimental results. Eriksen,C.W. & Schultz,D.W. 1979 Perception and Psychophysics,25, 249-263.
7.The Japanese Journal of Psychology 1993, Vol.64, No.5, pp396-400 視覚探索に及ぼす刺激運動の効果 河原純一郎


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