早稲田大学石田研究室


自転車走行空間における走行実態調査

加瀬谷 稔


1.はじめに

自転車は利便性の高い交通手段であり,また環境保全などの面から都市交通の手段としての利用促進が期待されている。利用促進のためには,自転車走行時における安全性や快適性が確保された走行空間の整備が必要であるが,我が国の自転車保有率(人口1人あたりの保有台数)は他の国々と比較して高いものの,自転車走行空間の整備においては欧米よりも低い整備水準となっている。

また,自転車走行時における安全性や快適性の確保のためには,利用者の交通ルールの遵守とマナーの向上が不可欠であり,利用者に対する安全教育などの社会環境の整備も重要な課題となっている。

2.調査研究について

2-1.目的

歩道と自転車道とに分離された空間に着目し,その自転車道における自転車利用者の走行実態について調査を行う。そしてその調査を分析し,自転車走行空間の整備,および利用者に対する交通ルールとマナーの教育といった社会環境の整備の必要性について考えていく。

2-2.進め方

歩道と自転車道が分離された道路を選出し,その自転車道の利用者を対象としたアンケート調査を行なった。アンケートの内容は自転車および自転車道に関するものの他に,自転車に関した交通ルールについての問題を加えたものである。そしてその調査場所と条件が似た,自転車が通行できる歩道を選出し,その2ヶ所で自転車の走行実態をビデオカメラで撮影し,それから得られたデータを分析した。

2-3.内容

○ アンケート調査

調査場所:埼玉県朝霞市内 朝霞郵便局前交差点
調査日時:2000年11月15日〜12月15日の12日間
調査対象者:自転車に乗っている16歳以上の男女
回答者は86名(うち有効回答80名(男:25名 女:55名))

○ビデオ撮影による調査

調査場所:  埼玉県朝霞市内 朝霞中央公園入口交差点(以下,『朝霞』)
 東京都小平市内 花小金井駅西第一無料自転車駐車場前の交差点(以下,『花小金井』)
調査日時(それぞれ30分ずつ撮影):
 『朝霞』 2000年12月6日(水),10日(日)
 『花小金井』 同年同月7日(木),10日(日)
調査すること:
 自転車乗用者が通行している部分,および横断歩道を通行する方法

3.結果・考察

○アンケートの結果(交通規則の理解度)

自転車に関した交通規則についての問題を6問出した。それぞれの問題についての正解率は図1のようになった。問1は正解率が低かったが,問2,問5は比較的高いものとなっている。

交通規則の問題の正解率

そして,アンケートのそれぞれの項目に書かれた選択肢を2つのグループに大別し,この交通規則の理解度について,χ2検定を行なった。それぞれの2つのグループは性別(男性・女性),年齢層別(39歳以下・40歳以上),自転車利用頻度別(ほぼ毎日・週に2,3回以下),自転車道利用頻度別(ほぼ毎日・週に2,3回以下),免許の有無(あり・なし)とした。

自転車に関する交通規則の問題におけるグループ別のχ2値を表にして示す(表1)。

自転車に関する交通規則の問題における条件別検定結果

有意水準5%で検定を行った結果,
問1において 免許の有無(ある>なし)
問2において 免許の有無(ある>なし)
問3において 性別(男性<女性)
問5において 年齢層別(40歳以上>39歳以下)
問6において 免許の有無(ある>なし)
以上が有意であった。

〇ビデオ撮影による調査の結果

・自転車が走行した道路の部分

『朝霞』付近の道路において,自転車が通行した道路の部分ごとにその自転車乗用者の人数を計測し,それらを集計した。自転車が歩道で走行した場合はその状況についても判断の対象にした。『花小金井』付近の道路においても同様の方法をとった。ただし道路交通法では,自転車が通行できる歩道では車道寄りを通行しなければならないため,車道寄りとそうでない部分に分けて人数を計測することにした。

それぞれの自転車乗用者の走行部分を平日・休日・全体と3種類に分け,それらを表にして示す(表2,3)。この表を元に,『朝霞』と『花小金井』におけるそれぞれの走行実態を比べるため,2×3のχ2検定を行なった。この場合,『朝霞』と『花小金井』の組み合わせをする項目はそれぞれ,

【遵守】「自転車道」と「車道寄りの部分」
【やむを得ない】「追い越しまたは対向自転車を避けるため」と「歩行者または自転車を避けるためなどによりどちらの部分にも属さない場合」
【違反】「自転車道に歩行者および自転車がいない場合」と「車道寄りでない部分」
 とした。

自転車が走行した道路の部分(朝霞)

自転車が走行した道路の部分(花小金井)

本来であれば【やむを得ない】「追い越しまたは対向自転車を避けるため」と「歩行者または自転車を避けるためなどによりどちらの部分にも属さない場合」においては,厳密に言うと後者は交通違反とは言えない状態である。しかし,両者の内容としては意味が似通ったところが有るため,便宜上組み合わせることにした。

χ2検定の結果,平日・休日・全体の場合において人数の偏りが有意であった(χ2(2)=12.20,p<.01),(χ2(2)=16.62,p<.01),(χ2(2)=12.99,p<.01)。そして【遵守】および【やむを得ない】において残差分析を行った結果,平日・休日・全体,全ての場合において有意性がみられた(表4)。(ここでは紙面の都合上,全体の場合のみを記載する)

調整された残差

このことから,『朝霞』と『花小金井』では【遵守】および【やむを得ない】それぞれの場合における条件が,期待度数からの偏りが大きいため, 『朝霞』の方が交通ルールを遵守する傾向が高く,また『花小金井』は, やむを得なかった,つまり歩行者を避けるため,歩道において車道寄りの走行ができない利用者が多かった,と言える。

・横断歩道の渡り方

『朝霞』,『花小金井』それぞれの場所における横断歩道の渡り方については,自転車から「降りて歩く」利用者と,自転車に「乗って走る」利用者とに分類した。『朝霞』において「降りて歩く」利用者は,平日,休日それぞれ1人,0人で,「乗って走る」利用者は,66人,36人であった。また, 『花小金井』において「降りて歩く」利用者は,平日,休日それぞれ1人,0人で,「乗って走る」利用者は,90人,44人であった。従ってどちらの場所においても,横断歩道を「乗って走る」利用者が「降りて歩く」利用者よりも圧倒的に多かった,と言える。

○ アンケートの結果(自転車道の整備)

アンケートでは,歩道と分離された自転車道と他の道路についての異なる点,および自転車道の整備に望む点を挙げてもらった(図2,3)。

自転車道と他の道路の異なる点

図2より全体のおよそ半分の利用者が「歩行者とぶつかる危険性が少ない」,「車を気にせずに走れる」といった回答をしており,歩道と分離された自転車道は,走行中の安全性についてある程度の効果を得ていることが分かった。そして図3より,自転車道整備に望む点には「段差や路面の凸凹をなくす」と回答した利用者が全体の67.5%にも及ぶことから,簡単な操作で走行できる環境を望んでいる事が分かった。

自転車道整備に望む点

4.結論

この調査研究により,以下のような結論が導き出せた。
・免許保持者の交通ルールに対する認識度は,免許未取得者のそれよりも高い。
・歩道と分離された自転車道を利用する自転車乗用者は交通ルールを遵守している傾向が高く,また自転車が通行できる歩道を利用する自転車乗用者は,歩行者などの接触を避けるためによって,車道寄りの部分を通行できない場合が多く見られる。
・歩道と分離された自転車道の利用者は,この自転車道 における安全性をある程度認めており,簡単な操作で走行できる環境整備が広まる事を望んでいる。

5.参考文献など

<文献>
1.「交通安全白書(平成12年版)総務庁編」大蔵省印刷局2000
2.「交通統計」平成11年版 (財)交通事故総合分析センター 2000
3.「六訂版 道路交通法の解説」 一橋出版 1996
4.田中敏・山際勇一郎 新訂ユーザーのための教育心理統計と実験計画法 教育出版 1989
5.太田勝敏ほか 「自転車の役割とマネジメント」 地域科学研究会 1998 
6.浦安市自転車利用総合計画検討調査報告書[概要版] 浦安市
7.「駅別乗降者数総覧 : 東京大都市圏・京阪神圏全駅」エース総合研究所 1996
8. 渡辺 千賀恵 「自転車とまちづくり」 学芸出版社 1999   
<ホームページ>
・「国土交通省」 http://www.mlit.go.jp/
・「(財)交通事故総合分析センター」   http://www.itarda.or.jp

自転車に関するアンケート


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