早稲田大学石田研究室


交差点における見切り発車の行動要因に関する観察研究

鶴田 恵子


1. 目的

交通事故のほとんどは当事者の予測ミス,思い違い,判断ミスといった要因によって引き起こされる.そこで,今回は事故が多いとされる,交差点における出合頭事故の原因となりうる見切り発車について焦点を当ててみる.

信号交差点において運転者は発進するとき,発車情報として目前の信号だけでなく交差道路の信号を考慮に入れることが多い.それにより,信号が青に変化したときに迅速な反応ができる.しかしそのとき交差点には,交差側車両が残っていることがあり,出合頭衝突が起こる要因の一つとなりうる.そこで,停止している状態から交差道路側の信号が確認できる場合と,できない場合での見切り発車の違いを調べる.

2. 方法

調査対象車両(車(1))の停止状態から動き始め,目前の信号が青に変化するまでの時間を測定すると同時に,発車後の右左折直進を調べ,また対向車(車(2)),対向車線側の車両(車(3),(4))の様子,車両数,横断者などをくまなく調べる(ビデオで確認できるよう撮影する).

調査概要
図1 調査概要

3. 結果・考察

結果をχ2検定にかけることにより,交差側信号が核にできるか否かで見切り発車数に差が出たことが判明した.すなわち,信号が見える車両は見えない車両よりも,自分の目の前の信号が青に変化する前に見切り発車をしていることが判明した.

信号確認と見切り発車の有無
図2 信号確認と見切り発車の有無

交差側の信号変化と見切り発進の有無
図3 交差側の信号変化と見切り発進の有無

しかし,両者の見切り発車をするタイミングは異なる.対向車線の信号(信号b)が確認できる車両は,その信号bが黄や赤のときに見切り発進をするが,信号確認ができない車両は信号bがまだ青の時点で発車している.これは,車(1)が停止している間,交差道路側の車両の流れが途絶えたときに起こる.多くの運転手は交差側の信号変化が不明なため,発車する判断材料として交差道路側の車両の流れを取り入れるようだ.信号bの確認ができる場合には,正確な情報が手に入る.だが,情報がなければ,代わりとなる情報を(たとえそれが確実性が小さなものでも)新たに見つけ出す傾向にあるようだ.

4. 結論

交差側信号が確認できない場合,見切り発車する車両は減少し,事故に遭う確率も減少するとはいえ,勘違いからくる事故が引き起こされる確率は高くなる.


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