早稲田大学石田研究室


音声聴取能力の評価法に関する研究

竹前 美香


1. 目的

言語によるコミュニケーションエラーの発生を防ぐためには,音声の聴取能力を正しく評価し,聴力障害を早期に発見することが必要である.音声聴取能力を評価する検査としては語音聴力検査があるが,時間と手間がかかるため,通常の健康診断では実施されていない.本研究では,通常の健康診断で用いられるオージオメータによる純音聴力検査と語音聴力検査の相関を調べ,純音聴力検査の結果から音声聴取能力を評価することの可能性についてを検討した.さらに,語音聴力検査を実施するに先立ち,音声聴取能力を予測することが可能な簡便な検査法を提案した.

2. 実験

正常耳の大学生10名に次の3つの検査を実施し,各検査間の相関について調べた.
1)オージオメータによる純音聴力検査
 各周波数における最小可聴値を測定した.
2)語音聴力検査
 20〜60dBにおける語音明瞭度を測定した.
3)周波数弁別検査
 5つの音の中にひとつだけ異音を挿入して示し,被験者に異音が何番目の音であるかについて答えさせた.音の提示時間は40,60,80msの3種類とし,各提示時間における周波数弁別閾値を測定した.

3.結果および考察

(1)純音聴力検査と語音聴力検査の関連性

純音聴力能力と語音聴取能力の散布図
図1 純音聴力能力と語音聴取能力の散布図

純音聴力検査は4分法聴力レベル,語音聴力検査は50,60dBの平均を標準編量に変換した値を用いた.
 図1に示す通り,純音聴力検査と語音聴力検査の結果には,相関があるとはいえなかった.

(2)周波数弁別検査と語音聴力検査の関連性

周波数弁別閾の提示時間による変化
図2 周波数弁別閾の提示時間による変化

図2に示す通り,周波数弁別検査では,提示する音の時間が長くなるほど弁別閾は小さくなる傾向が見られた.
 語音聴取能力と周波数弁別検査の関連性については,基準周波数1000Hz,音の提示時間40msで実施した検査では相関が見られたが,提示時間が60,80msの場合には相関が見られなかった.すなわち,短い提示時間40msでは,周波数弁別能力が高い人ほど弁別閾は小さく,低い人ほど弁別閾が大きくなるが,60,80msにおいては,能力による差が生じなかったと考察される.
 今回の検査では,提示時間40msの場合,周波数弁別閾の平均は14.75Hz,標準偏差は8.35であった.基準音の周波数を1000Hzとした場合,1020〜1025Hzの音を異音として認識されれば,大体正常範囲内にあると考察される.


4. 結論

本研究の結果,純音聴力検査のみで音声聴取能力を評価することはできないことが明らかになった.
 音声聴取能力を評価するためには,純音聴力検査以外に,提示時間40msにおいて1000Hzと1025Hzの周波数弁別能力を検査することが必要であることが明らかになった.


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