早稲田大学石田研究室


明るさと距離感に関する一研究

中村 真奈美


1. はじめに

シミュレータはその必要性が高まっている交通環境にあるにもかかわらず,加速度を実際に生じさせることができなかったり,周辺視野での動きの感覚が活用できない,速度感や距離感がつかみにくいなどの問題点がある.今回の実験では画像の明るさを変えることで対象までの距離感がどのように変化するか,また対象によって明るさの影響がどのように及ぶかを探る.

2. 方法

対象は▼,●,ヒトの3水準,明るさがフォトショップ上で-20,-40,-60,-80,-100明るさに変えた5水準,対象までの距離が15m,20m,25m,30m,35mの5水準,計75水準の刺激をランダム提示し,標準刺激の対象までの距離を100としたとき比較刺激がどれくらいの距離になるかを判断してもらう.▼,●の対象は同じ面積で,ベージュの長方形の下地に貼り付けたものである.ヒトは男子大学生身長168cm.

3. 結果と結論

画面の明るさ,対象の大きさ,形の3条件で検定を行ったところ,対象までの距離と形に主効果が見られ,形と明るさに交互作用が見られた.したがって全体的に見ると相対的な距離判断は明るさの影響を受けることなく正確に行われていることがわかった.しかし同じ距離にあっても対称の種類によって距離感が違うことも明らかになり,▼が一番近く感じ,ついで●,ヒトが一番遠く判断された.また対象が明るいほど明るさの影響を受けやすい区,15mの距離にあるときが対象自体の輝度が高かったため,距離感に差が最も現れた.15mの距離にあるときに限ると,▼・●の対象は「看板」という一つの対象として考えられ,ヒトだけ全く違う距離判断がなされた.▼・●の2つを比べると▼の方が近く見られる.これは同じ面積である場合,●の直径より▼の一辺のほうが明らかに長いために起こった錯覚であると考える.「とまれ」の標識の形はこのことを考えると丸い標識よりも同じコストで大きな効果をあげているといえるのではないかと思う.また●・▼の明るさの変化による距離感の違いが,一番暗いときがいちばん近く感じ,明るくなるにしたがって遠く判断され最も明るい画像ではまた近く見えるという判断がされた.

対象の形・輝度と距離感の関係
図1 対象の形・輝度と距離感の関係
判断値は対数変換値.判断値が大きいほど遠く判断されたことになる.
なお○は●,△は▼,◆はヒトを表す.

これには相対的明るさが大きく影響していると思われる.これは背景との明るさ対比が大きい対象ほど比較に近くされるというもので,今回の実験では▼・●のバックにはりつけたベージュの下地がこの効果をもたらすことになってしまった.暗い画面の時にはこの下地が背景に比べてかなり明るく,標準刺激になった画像のターゲットより明るさ対比が大きかったため近く感じられたと思われる.また一番明るい画像で近く感じられたのはターゲットの置かれたアスファルトとの明るさ対比が大きかったのではないかと考える.ヒトには下地がなかったために画像が暗くなると小さく遠く判断された.どのくらいの明るさから距離感に影響が出るのかはっきりとはわからなかった.


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