早稲田大学石田研究室


点滅表示による誘目性への影響について

中島 智人


1. はじめに

現在,街角の看板や,交通標識の表示器,インターネットのホームページ上などでのアイコンとして,静止画だけではなく,そこに動きを持ったものが数多く見られるようになった.しかし,動きを持たせることが,誘目性について,どのように,どれほどの影響を与えているかという調査はあまり数多く行われていない.そこで,今回の実験では,対象に動きを持たせることによる,誘目性への影響を調べる実験の一つとして,点滅表示による誘目性への影響を調べた.

2. 目的

点滅表示を用いることが,対象の誘目性と検索性にどのように影響を与えるかを検証する.

3. 方法

視覚探索課題を用い,点滅表示による反応時間への影響を調べた.パーソナルコンピュータのディスプレイ上に1から20の数字を,ランダム位置に提示し,それぞれを,各条件ごとに異なったパターンで点滅させた.被験者は,提示された刺激の中から,ターゲットとして設定された数字を検索し,それぞれをマウスでクリックした.

点滅刺激は,枠線の表示されている状態と枠線の表示されていない状態を交互に繰り返して表示するものとした(下図1参照).非点滅刺激は,枠線が常に表示されているもの(図1左)とした.

提示刺激
図1 提示刺激

4. 結果

それぞれの条件での平均反応時間は図2のようになった.表1はそれぞれの条件での反応時間の差が有意であったかどうかをあらわしたものである.

条件ごとの平均反応時間
図2 条件ごとの平均反応時間

表1 各条件での平均反応時間のLSD法による多重比較結果
各条件での平均反応時間のLSD法による多重比較結果

結果1:ターゲットが点滅しているか否かの情報が与えられていた条件(="ターゲットは必ず点滅条件"と"ターゲットは必ず非点滅条件")では,情報を与えられなかった条件よりも,反応時間が短くなった(図3).この2条件において被験者は,まず,刺激が点滅しているか否かを判断し,その後,それがターゲットであるか否かを判断していたと思われる.このことから考えると,図3の結果は,点滅しているか否かの判断が,ターゲットであるか否かの判断よりも高速に行われたことを示していると思われる.この結果は,検索者が点滅・非点滅を知っているという状況において,点滅を利用して対象を分類することが検索性を高めるために有効であり,また,点滅していることを目印として検索することによって,より速い検索ができることを示している.

点滅・非点滅の情報の有無による比較
図3 点滅・非点滅の情報の有無による比較

結果2:"周波数ランダム条件"では,"すべて点滅条件(周波数は一定)"に比べ,有意な差で平均反応時間が長かった(図4参照).このことは,点滅するものが複数曝露される場面において,それぞれの点滅のタイミングがばらばらであることは,検索性の低下を招くことを示している.

周波数ランダム条件と周波数統一条件の比較
図4 周波数ランダム条件と周波数統一条件の比較

結果3:"ターゲットのみ点滅条件"の平均反応時間が著しく短かった(図5).この結果は,周囲に点滅物がないという状況において,単独で点滅しているものは優先して検索される(=誘目性が高い)ことを示している.

単独点滅による反応時間の短縮
図5 単独点滅による反応時間の短縮

結果4:"すべての刺激が1/2の確率で点滅条件"において,ターゲットが点滅していなかったときの反応時間よりも,ターゲットが点滅していたときの反応時間のほうが有意に長かった(図6).この条件では,刺激の点滅・非点滅はターゲット検索の手がかりとしては,全く関係なかったにもかかわらず,ターゲットが点滅していたときの反応時間が長かった.このことは,点滅物と非点滅物の数に差がない状況において,対象を点滅させることは,誘目性を低下させるということを示している.

ターゲット点滅時と非点滅時の平均反応時間比較
図6 ターゲット点滅時と非点滅時の平均反応時間比較

5. 結論

1)(結果1より)点滅していることを目印として検索することによって,より速い検索ができる.
2)(結果2より)検索性の観点からみて,点滅物の周波数は一定であることが望ましい.
3)(結果3より)周囲に点滅するものがないならば,点滅物の誘目性は著しく高くなり,優先的に検索される.
4)(結果4より)周囲の点滅物,非点滅物の比率に差がない状況において,対象を点滅させることは,その対象の誘目性を低下させる.


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