早稲田大学石田研究室


音に着目した人とコンピュータとのインターフェース

小林 稔


1. 研究の目的

近年のインターネットブームにみられるように,文書作成や伝票計算のためだけではなく,コミュニケーションを取るための道具としてパーソナル・コンピュータ(以下パソコン)が利用されている.これにともない,今までパソコンを利用しなかった人たちも,パソコンを利用しはじめている.
 人がパソコンに情報を入力する手段としては,キーボード,マウス,トラックボール,ジョイスティックなどがある.
 これに対して,パソコンが人に対して情報を出力する手段としては,CRTによる視覚表示や音声合成や警告音などによる聴覚刺激などがある.
 現在では,WindowsやMac-OSなどのグラフィカル・ユーザー・インターフェースを用いたOSの登場により,飛躍的にパソコンが使いやすくなっているが,聴覚刺激を用いてパソコンを使いやすくする試みはまだ少ない.
 人が持つ感覚のうち,視覚が最も情報量が多いといわれているが,聴覚も視覚がとらえきれない領域をもカバーできる重要な感覚である.また,VDT作業の際に聴覚刺激をうまく用いることで,作業の負担を軽減したり作業能率を高めたりできることが考えられる.
 そこで本研究は,VDT作業の中でも特にキーボード入力の際に,音刺激を与えることの有効性を検討するものである.

2. 方法

被験者の行う作業は,1〜3までの数字で構成された3桁の整数の入力である.その際,操作系として数字の入力と確定(リターンキー)はテンキーを用い,訂正のための削除にはBSキーとDELキーを用いる(BSキーとDELキーは同じ機能とする).
 操作者の入力に対応した聴覚刺激を与える場合と与えない場合,この2条件における正入力数,誤入力数を測定する.

3. 結果

表1 t検定の結果・正答数(効果音ありVS効果音なし)
 効果音ありの正答数の標準偏差=32.31
 効果音なしの正答数の標準偏差=33.65
 自由度 12
 tの値 0.11
 両側5%の棄却域 2.18

表2 t検定の結果・誤答数(効果音ありVS効果音なし)
 効果音ありの誤答数の標準偏差=0.59
 効果音なしの誤答数の標準偏差=1.49
 自由度 12
 tの値 1.75
 両側5%の棄却域 2.18

4. 結論

本実験の結果から以下のことが判明した.
1)入力した数値に対応する聴覚刺激を与えることによって,入力作業の量は影響を受けない.
2)入力した数値に対応する聴覚刺激を与えることによって,入力作業の質は影響を受けない.
3)入力した数値に対応する聴覚刺激を与えられることを好む人が多いという傾向が見られる.

つまり,入力した数値に対応する聴覚刺激を与えることによって,数値の入力作業という飽きやすい単純作業をより楽しくすることができ,そのことによる作業の量や質の低下は見られないということである.


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