早稲田大学石田研究室


人間の周辺視能力におよぼす明るさの影響に関する一研究

神田 直弥


1. 目的

周辺視(peripheral vision)は,中心視(foveal vision)に対する視機能の総称である.網膜に分布する視細胞には解像度の高い錐体細胞と,解像度は低いが光に対する感受性のつよい桿体細胞があるが,周辺部には後者が多く分布している.
 この桿体細胞は暗い場所で感度が高くなる性質を持つため,従来の研究は暗所視で行われることが多かった.しかし,人間の周辺視機能は明所視でも有効なものである.そこで本研究では照度を要因としてあげ,その変化が周辺視での見えにどのような影響を与えるかを,光刺激に対するRTの形でとらえ,定量的に表すことを目的とした.

2. 方法

周辺部,左右30°,55°,80°の合計6箇所にLEDを配置した.これらはランダムな順番と時間間隔を持って1つずつ点灯した.被験者はLEDの点灯に気づいた場合,できる限り速くキーを押して反応することが求められた.被験者には,これと同時に中心視でも作業を行わせた.これは3色の円に対する弁別反応であり,赤の円が提示されたときのみ反応することが求められた.また,実験中の眼の動きを見るために,EOGを用いて眼球運動を計測した.照度は0lx,50lx,100lx,150lxの4段階に設定された.

実験システム図
図1 実験システム図

3. 結果

分散分析の結果,照度の主効果は有意であったが,提示効果の主効果は見られなかった.無反応の回数は明るくなると多くなった.また,視野の右側と左側では右側の反応時間が有意に速かった.

平均反応時間
図2 平均反応時間

提示角度ごとの回帰の結果,相関は有意ではなく,線形モデルをたてることはできなかった.
 なお,LED点灯に伴う眼球運動の生起が見られたのは,全試行中の10%程度であった.

4. 結論

提示角度ごとの反応時間には有意な差が見られなかったが,無反応をかさねあわせて考えると,差が見られる傾向にあるといえる.
 線形モデルがたたなかったのは,被験者数が少なかったためと思われる.
 桿体細胞は運動知覚に優れているため,LEDの点灯確認のような課題では,眼球運動を生じさせなくても,反応することができる.


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