早稲田大学石田研究室


自動車シートの圧力変化に関する時系列的研究

小澤 洋


1. 目的

人間が快適と感じるといわれる"1/fゆらぎ"を基本とした評価尺度を,実車走行における自動車シート評価方法に適用し,シートを中心とした自動車の総合的快適性を評価するための手法を開発することを目的とする.

2. 方法

圧力分布測定センサー(ニッタ(株)製)を臀部・背部に取り付けた乗用車(日産CedricE-PY33)に乗り,一般道・高速道を約1時間ずつ走る.
 質問紙による主観評価とビデオによるプロトコル分析もあわせて行う.

自動車シートの圧力変化の例(一般道
図1 自動車シートの圧力変化の例(一般道)

自動車シートの圧力変化の例(高速道)
図2 自動車シートの圧力変化の例(高速道)

3. 結果

得られるデータは2秒ごとの座面にかけられる体圧分布である.これは予備実験により,PCのデータ記録上2秒ごとが最適と判断した.臀部,背部のセンサーごとに2秒ごとに2つに分割し,それぞれの平均圧力値をもとめ,グラフにプロットしたものを,運転時の自動車シート圧力変化データとする.図1,2に40分の圧力変化の例を示す(左:一般道,右:高速道).
 これらをFFT処理をして両対数軸上にプロットし,周波数とパワースペクトルとの間で回帰分析を行う.このとき得られる回帰直線の傾きを主観評価点と比較したものが表1である.

表1 パワースペクトルの傾きと主観評価
パワースペクトルの傾きと主観評価

本研究において用いた評価指標の基準である"1/fゆらぎ"であるが,快適性に関わるリズムの場合パワースペクトルの傾きは-1となる.傾きの値が小さくなる(回帰直線が立ってくる)とそのリズムは単調なものになり不快になると考え,直線の傾きと主観評価との相関を取った.結果,一般道・高速道共に臀部との間に相関が見られた(順にr=0.44,r=0.54)が,背部では高速道ではやや見られたものの(r=-0.21),一般道はきわめて相関が低かった.

4. 結論

自動車シートの主観評価に対する被験者の回答が,部位に関する評価として必ずしも有効でないと思われる.そこで姿勢変化を伴うハンドル操作が必要とされる背部のシート評価(特に一般道)には,動的条件を踏まえた上での新しい評価方法が必要である.


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