早稲田大学石田研究室


カーブ走行時の運転者の視認モデルの作成

石郷岡 亮


1. 序論

人と物の輸送に際して質,量そしてその目的に応じて交通手段を容易に選ぶことができる.大量輸送ならば鉄道・海上交通,時間ならば航空交通,ドアからドアといったパーソナルな交通は自動車交通である.これら人と物資の輸送に関しての基本条件は,安全である.しかし他の交通手段に比べ,自動車交通は,便利である反面,人間要素の関わり方が多いので凶器性も秘めている.

このような状況において,自動車メーカーは安全性の向上に力を注いできた.しかし自動車の運転は,他の交通機関に比べ人的要素の関与する比率が大きい.運転者のちょっとしたエラーによって,人々の生活を破壊している.自動車や道路などのハード面は,どんどん改良されているにも関わらず,道路利用者の改善は行われていない.そのような中で,人間工学の視点からその安全性に対し注目するのは自然な成り行きである.

運転者は動作決定の材料の大部分を視覚的な情報によっており,運転者の判断の過認エラーは多くの重大事故を招いてきた.それに対処するために視覚的情報を制御する努力がなされてきた(認知しやすい線形・線形の確認を容易にするマーキング・視線誘導用の植樹・標識の改良など).しかし,運転者は視界内のあらゆる点から等しい精度で情報を得ているわけではなく,いわゆる認知行為の可能なのは視角にして1°内外の中心部分に過ぎない.したがってこの注視点の分布状況を知ることにより運転者の与えられる情報を調べることによって,自動車を運転するときに必要な情報を明確にすることが,安全の面から重要であると思われる.

2. 研究目的

運転中における情報認知の90%以上は目に依存する(Hartman,1970)ことから考えると,,自動車の視認性や道路環境が重要であることは言うまでもない.近年,人間工学の発展により自動車の視認性は向上し,道路環境も一段と改良された.しかし,人間側には未解明の分野が多い.

運転中のドライバーの眼球運動については多くの研究がある.最近におけるアイマーカー・システムの発達は,運転中のドライバーの視覚的な探索パターンを研究することを可能にした.コンピュータを使用して,視線の動きを連続的に示すようないっそう進んだ方法も開発されている(Hofner & Hoslovec, 1973; Mourant & Rockwell, 1970; Nagayama et at., 1979; Rockwell, 1972).

また,「自動車運転時の運転者の視認モデルの作成」(早稲田大学人間科学部石田研究室4期生:神馬 豊彦氏)においても,直進時やカーブ走行時の運転者の注視点の研究が行われた.

本研究では,自動車運転時の左右カーブ走行時(特にミラーのある見通しの悪いカーブ・見通しの良いカーブ)における注視行動を測定し,一般的な注視行動の視認モデルを作成することを目的とする.

3. 実験

アイマークレコーダーEMR-7を被験者に装着し,ミラーのある見通しの悪い左右カーブ,見通しの悪い左右カーブを走行してもらい,測定を行った.

4. 結果

カーブにおける水平方向注視点角度をグラフで表した.

ミラーのある見通しの悪い左カーブ走行時の水平方向注視点出現頻度
図1 ミラーのある見通しの悪い左カーブ走行時の水平方向注視点出現頻度(被験者全員)

5. 考察・結論

カーブ走行時において,ドライバーは進行方向の状態を確認するために道路の消失点,左奥や前方を見ている.同じ左カーブ,右カーブにおいて,見通しがよい,悪いによって,差があるかどうか検定を行った.検定の結果,注視点分布の間には有意差があると考えられた.その理由は,視野の問題であると思われる.見通しが良いということは,視野が広いため幅広く注視することが可能であるが,見通しが悪い場合,視野が狭いため注視する範囲も小さくなる.このことが差の要因であると推測される.

カーブ走行時は,左側のラインをマーカーとして注視して運転している.そのため左カーブ走行時は,ラインは視野の中央より左側にあり,そこを中心に前方,左奥,道路の消失点を注視するため,注視点は中央より左側となる(0°〜30°).右カーブ走行時は,ラインは中央より左側にあり,そこを中心に前方や,右奥,道路の消失点を注視するため,注視点は中央の左側(-3°)から右奥(30°まで)になる.

ミラーに関しては,左側のライン(-3°〜-6°)をマーカーとしているため,左カーブ走行時はその位置からミラーの位置(9°〜12°)へ注視点を移すよりも,道路の消失(-15°)を注視する方が簡単に行える.

右カーブ走行時は左側のライン(-3°〜-6°)から,ミラーの位置(3°〜6°)へ注視点を移したほうが,道路の消失点(15°)よりも簡単に行える.

Shinarは直線では道路の路側は周辺視によってカバーされるが,カーブに入ると道路の路側は直接に凝視されるといっているが,本実験においてもそのことと同様の結果が表れたと推測される.


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