早稲田大学石田研究室


自動車運転時の運転者の視認モデルの作成

神馬 豊彦


1. 序論

トラック輸送が日本の流通を根底から支えているなどの社会的な側面のみならず,家庭内において自動車の果たす役割が大きくなってきていることは,各家庭に2台3台の自動車を所有していることも珍しいことではなくなったことからも容易に推測できる.このような社会情勢の中で,自動車の安全性に関心が高まったのは当然のことであり,各メーカーの努力によってサイドインパクトビーム,エアバッグなどの開発に見られるような,ハード面(車体自体)の安全性は高まってきている.そのような中で,人間工学的な視点から,その安全性に対して注目することは自然な成り行きといえよう.

自動車を運転する際,人はその動作決定の材料の大部分を視覚的な情報に頼っているといえる.そして,特に高速運転に際しては視覚情報に対する運転者の判断の過誤は重大な事故を招く場合が多いため,様々な形で視覚情報を制御するための努力がなされてきた.認知しやすい線形,線形の認識を容易にするマーキング,視線誘導用の植樹,標識の改良などはそうした試みの結果である.しかし運転者は同時に全視界内から等しく情報を得ているわけではなく,いわゆる認知行為が可能なのは視角にして1度程度の網膜中心窩部分に過ぎない.したがってこの注視点の分布状況,特性を知ることによって運転者が得ている情報を,また運転に必要な情報を知ることができると考えられる.そして,必要な情報を知ることによって,運転者にとって本当に見えなければならない部分を明らかにすることは,自動車の安全性の面から研究が必要であると思われる.

2. 研究目的

運転中の入力情報は,視覚からのものが最も重要な位置を占めていると考えられ,安全性の向上にあたって運転者の視覚研究は欠くことのできないものということができる.運転者の視覚研究,特に注視点およびその移動に関する研究は,1960年代から始められており,注視点を光学的に測定するアイマークレコーダーなどの開発によって,本格的な研究が行われるようになってきた.

本研究では自動車運転時の,特に直進時,左右カーブ走行時における運転者の注視行動を測定し,一般的な注視行動の視認モデルを作成することを目的とする.

3. 実験

自動車走行時の注視点を測定するため,室内において,スクリーン上に液晶プロジェクターで事前に撮影しておいた路上走行風景を,アイカメラを装着した被験者に見せ,その注視点を測定した.本実験では,直進道路走行時,右カーブ走行時,左カーブ走行時の3つの場合についての測定を行った.

4. 結果

・直線道路走行時の水平方向注視点分布は,中央左側3〜5度の範囲に注視点の出現頻度が高いことを特徴とする.
・左右カーブ走行時の水平方向注視点分布は,直線道路走行時に比べ,注視角度が広く,また,右方向に比べ,左方向に対する注視角度が浅いことが特徴としてあげられる.

5. 考察,結論

・注視角度左3〜5度の範囲への注視点の出現は,運転者の自車位置確認,道路の形の認知などのために道路左側路側帯,ガードレールなどを確認するための注視行動であると推定され,直進道路走行時,運転者は通常水平方向視角0度付近の比較的遠方の路面あるいは前方の車両などを見ているが,同時に自車の走行状況確認,道路の形(幅など)の確認のために,路側帯,カードレールなどにも注意を払っているものと考えられる.
・通常市街地走行時にカーブが出現した場合,運転者は比較的近距離のレーンマーク,あるいはガードレール,路側帯などの線形をカーブ奥に向かって追従するという視線誘導を行っていると考えられる.そしてその際にも直進道路走行時に見られる,自車走行状況確認,道路の形(幅など)の確認のための道路脇の路側帯,ガードレールなど(右カーブのときは左,左カーブのときは右)に注意を払う注視行動を行っているものと推定できる.


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