早稲田大学石田研究室


日韓の道路交通標識に関する一研究

金 銀貞


1. 目的

日本の経済はバブル経済の崩壊により高度計長期から減退期に入ってきた.しかしながら,国際的に見れば大幅な貿易黒字は続き,円高が進み,諸外国との賃金格差は広がっている.また,経済及び産業の国際化による外国企業の進出などにより,外国人労働者が急激に増加した.それに,日本の国際社会での地位の向上や,文化,教育分野での国際評価の向上,また,日本の教育界の受け入れ体制と日本政府の政策により諸外国からの留学生が増加している.入国外国人の中でも,外国人登録人数で最も多いのが韓国人である.また,日本に一番近くにいて,似ていて異なる文化や交通状況を持つ韓国人における日本の道路標識の汎用性をはかることは必要であって,妥当であると言える.

本研究においては,日本の道路標識の国際的情報伝達性をはかる一例として,韓国人及び在日韓国留学生に対する日本の道路標識の国際的情報伝達性を調査し,日本の道路標識の国際的情報伝達時における問題点を考察することを目的とする.

2. 方法

韓国での生活経験及び韓国への観光旅行においても10日以上にわたり韓国に滞在したこと及び運転経験がなく,意識的にも無意識的にも,韓国の道路標識とその意味について学習経験がないもので,日本で取得した日本の第一種普通免許証を保持している日本の国籍をもつ日本字50名,日本での運転経験がなく,意識的にも無意識的にも,日本の道路標識とその意味について学習経験がないもので,韓国で取得した韓国の第二種普通運転免許証(日本の第一種運転免許証に相当)を保持している韓国の国籍を持つ韓国人75名,日本で勉強している,日本の道路標識とその意味について正式な学習経験がないもので,韓国で取得した韓国の第二種普通運転免許証(日本の第一種普通運転免許証に相当)を保持している韓国の国籍を持つ在日韓国留学生50名を抽出する.そして,各被験者にアンケートを配り問題に対する答えを書かせるようにして,日本の道路標識に対し知識及び経験のある日本人の日本の道路標識に対する正解率,韓国の道路標識に対し知識及び経験のある韓国人の韓国の道路標識に対する正解率,韓国の道路標識に対し知識及び経験のある在日韓国留学生の韓国の道路標識に対する正解率,また,日本の道路標識に対し経験のない韓国人の日本の道路標識に対する正解率,韓国の道路標識に対し経験のない日本人の韓国の道路標識に対する正解率,また,日本の道路標識に対し経験のある在日韓国留学生の日本の道路標識に対する正解率を調査する.日本人の被験者には韓国の道路標識をさきに回答させて,そのあとに日本の道路標識を回答させるようにした.韓国人と在日韓国留学生の被験者には日本の道路標識をさきに回答させて,そのあとに韓国の道路標識を回答させるようにした.なお,標識の正式名称を回答できなくても,その意味を正しく回答できていれば正解とし,同一内容の回答を何度使用してもよいことにした.

日本の道路標識群は,昭和35年12月17日公布された総理府建設省命令3号を基本とし,平成1年2月23日に改正された最新の日本の道路標識より,規制標識13個,警戒標識9個,指示標識2個,案内標識1個,合計25個の道路標識を使用した.

韓国の道路標識群は,内務部令450号により現在韓国で使用されている道路標識を,運転免許取得に関する本(市販のもの)に載っている交通安全標識一覧表より,規制標識9個,注意標識(日本の警戒標識に相当)9個,支持標識7個,合計25個の道路標識を使用した.また,その25個の中に韓国にはない日本の道路標識3個と,日本の道路標識とは少し異なるが韓国でよく使われている道路標識3個を使用することにした.

3. 結果

日韓両国の人々の日本の道路標識に対する正解率を図1に,勧告の道路標識に対する正解率を図2に示す.

カイ2乗検定の結果として,日本の全標識に対する正解数の検定では,日本人と韓国人と留学生間,日本人と韓国人間,日本人と留学生間において5パーセント水準で有意差が見られた.
 日本の標識種類群に対する正解数の検定では,規制標識に日本人と韓国人と留学生間,日本人と韓国人間において5パーセント水準の有意差が,また,日本人と留学生間において一パーセント水準の有意差が見られた.さらに警戒標識には日本人と韓国人と留学生間,日本人と留学生間,韓国人と留学生間において5パーセント水準の有意差が見られ,案内標識には日本人と韓国人と留学生間,日本人と韓国人間,日本人と留学生間において5パーセント水準で有意差が見られた.

韓国の全標識に対する正解数の検定では,日本人と韓国人と留学生間,日本人と韓国人間,日本人と留学生間,韓国人と留学生間において5パーセント水準で有意差が見られた.
 韓国の標識種類群に対する正解数の検定では,規制標識に日本人と韓国人と留学生間,日本人と韓国人間の検定において5パーセント水準の有意差が,また,日本人と留学生間,韓国人と留学生間において0.5パーセント水準の有意差が見られた.警戒標識には日本人と韓国人と留学生間,日本人と韓国人間,韓国人と留学生間において5パーセント水準の有意差が見られた.指示標識には日本人と韓国人と留学生間,日本人と韓国人間,日本人と留学生間において5パーセント水準の有意差が見られた.

日本の道路標識に対する正解率
図1 日本の道路標識に対する正解率

韓国の道路標識に対する正解率
図2 韓国の標識に対する正解率

4. 考察および結論

・日本の道路標識に自国民に対する情報伝達度は,妥当であり大きな問題はないが韓国人に対する情報伝達度(国際的情報伝達性)が低い標識が多くある.
・日本語(漢字)だけで表示されている「徐行」,「一時停止」,「原動機付自転車の右折方法」等は,日本語(漢字)を学習していない他国民からもわかるように改善される必要がある.
・図形だけでは混乱しやすい「一方通行」等は,文字を付加するなどの改善が望ましい.
・日本の交通の特殊な事情が背景となって作られた標識に対する他国民への伝達性を考え,見直す必要がある.
・日本に入国,及び在住する外国人に交通安全のための,広報活動や教育が必要である.


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