早稲田大学石田研究室


学校不適応に関する一研究

松尾 奈々子


1. 序論

現在,マスコミなどにも社会問題としてよく取り上げられているが,学校生活に適応できない子どもたちが増えている.「学校嫌い」すなわち学校生活に適応できない子どもたちのその原因として,学校生活もしくは学校のあり方そのものの問題点も考えられるが,無論それのみではありえない.家庭の問題,特に親子の問題といった家庭環境,そして家庭とその子どもを取り巻く社会環境も大いに影響しているといえよう.その点も考慮し,本論では,学校環境におけるストレス・家庭環境におけるストレスについて調査した結果をもとに,学校への適応に困難を感じる子どもたちの問題を探ってみたいと思う.

2. 調査目的

現在学校に通っている子どもたちは,学校生活に適応していくことにどのようなストレスを抱いているのか.家庭生活のストレスが延長して学校生活の不適応に影響を及ぼしていることも,大いに考えられる.こういった学校不適応の問題点について考察するために,子どもたちがストレスを感じる全体的な傾向を把握することを,第一の目的とした.

また,同世代ではあっても,男女間で必ずしも同様の結果がでないであろうことが予想される.よって,男女それぞれが感じるストレスにはどの程度の有意差があるものか測定することを,第二の目的とした.

3. 方法

3.1. 調査対象

 中学2年生224人(男111・女113)
 高校1年生171人(男87・女84)
 高校2年生210人(男106・女104)

3.2. 調査日時

1991年10月

3.3. 調査場所

各学校の教室

3.4. 調査方法

質問事項に対し,「1.そうでない 2.ややそうでない 3.どちらでもない 4.ややそうである 5.そうである」のうち,該当するものに1つマルをつけてもらう.質問事項は113問ある.質問紙には年齢と性別のみ記入してもらい,無記名とする.結果のデータを中2・高1・高2に分け,さらにその中で男・女・全体と分け,男女のデータをt検定にかけて,各学年ごとに有意差を調べる.

4. 結果と考察

家庭環境における設問においては,中学2年生で男子に不満が多く有意差が見られた.「親が,勉強や学校のことをいちいち聞くのがうるさい」という設問にも男子の方が不満を強く示している.その結果,やはり男子は日常生活で女子に比べて親とのコミュニケーションに欠けるため,「成績だけでしか自分を見ていない」などといった考えを強く抱くようになる.勉強や学校以外の共通の話題を通して親が子どもと接する機会を増やすことが望まれる.

一方,学校環境において顕著にストレスが表れたのは,教師との関係と友人との関係である.勉強それ自体に対するストレスはあまりみとめられない.教師に対しては,「先生は私の気持ちを分かってくれない」,「せっかく頑張って成績をあげたのに”当然だ”といわれるとがっかりする」など,教師に認めてもらいたいと言う気持ちが強くあらわれていた.

また友人関係においては,グループや集団から外れて孤独になることを極度に恐れる傾向が,調査の結果明らかとなった.彼らは仲間はずれを恐れ,集団から突出することを嫌う.「何でも打ち明けられる友達がいる」と回答しているにもかかわらず「友達は自分といても楽しくないのではないか」とも感じる不安な状態が結果に表れた.彼らは孤独になることを恐れているが,実は心の中で既に孤独を感じているのではないかと思われる.

5. 結論

彼らが最も顕著にストレスを示したのが”集団から突出して孤独になる”ことである.なぜ彼らはこのように集団から外れることを恐れるのか.それは,「協調性」という名に替えた「画一性」を子どもに押し付けがちな学校教育と家庭教育によって生じたひずみの表れなのかもしれない.画一的な人間となることを暗に求められてきた子どもたちは,集団から外れることに不安と罪悪感を抱き,それがストレスとなり耐え切れなくなった状態が,学校不適応という形をとって表れるのではないだろうか.


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