早稲田大学石田研究室


運輸業界に見る女性の職業意識に関する一研究

芝田 稔子


1. 目的

社会全体で労働力不足がいわれ,特に運輸業界など3K(きつい,きたない,きけん)というイメージのある職場では人手不足は深刻な問題となっている.業界では,人手不足問題解消のために新たな労働力として,高齢者,女性に注目し始めている.

一方,女性の就業意欲は益々高まり,従来"男社会"といわれてきた業界にまで進出しつつある.運輸業界もその一つであるが,最近そこにドライバーとして働く女性が見られるようになってきた.女性の職場として運輸業界が適当であることがわかれば,そこに働く女性も増え,労働力の需要,供給ともに満たされることになる.

本研究では女性が3K業界に進出することはどの程度可能であるのかを考えるために,ドライバーとして働いている女性と事務職で働いている女性とから,それぞれの職業意識を調査する.

2. 方法

事務職・集配ドライバー・タクシードライバーの3つの職種の女性を対象にアンケート調査を行う.人数は以下のとおりである(表1).

表1 対象者人数
対象者人数

3. 結果

職種別の平均年齢は,事務職は28.6歳,集配ドライバーは27.2歳,タクシードライバーは43.1歳である.タクシードライバーの最年長者は57歳で,職種全体が中高年層で占められている.学歴別に見ると,事務職は高卒に次いで短大・大学卒が並ぶという順であるが,集配ドライバーは高卒,専門学校,中卒の順で,タクシードライバーは高卒に集中している.勤続年数は,どの職種も3年未満の層を合計すると過半数に達し平均的に短い.しかし,事務職では5年以上金属者が30%を越え,勤続年数が短いものと長いものと2層に分かれている.5年以上勤続者は集配ドライバーに7%,タクシードライバーにはまだいない.

因子分析を行った結果,5因子が抽出された.各因子を構成する質問項目は以下のとおりである(表2).

表2 因子分析結果
因子分析結果

4. 考察

プロフィールに関して年齢段階から見ると,集配ドライバーが非常に若いが,これは運輸業界が最近,高校を卒業する女性に対し積極的に採用活動をはじめたためであると思われる.タクシードライバーは年齢が高いために学歴が低いといっていいだろう.勤続年数を見ると,両ドライバーとも,3年未満の層が70%となり,全体的に勤続年数は短い.これはドライバー社員の定着率が低いというよりは,ドライバーとして女性を積極的に採用し始めたのが最近であることが,影響していると思われる.また,事務職女性が勤続年数3年未満と5年以上の層に分かれているのも興味深い.これは,結婚・出産までの一つの過ごし方として仕事をするという女性と,生き方の一つとして仕事をするという女性と2つのタイプがあるということではないだろうか.

事務職の女性は会社の設備に対する要求が高く,在社時間が長いと居心地に対する要求が高くなるものと推測される.一方,ドライバーは「トイレ」,「シャワールーム」等の比較的基本的な設備を要求しており,企業側の設備面での不備をうかがわせる.

職業意識を見ると,タクシードライバーが最も仕事に対して積極的である.この理由としては,彼女らの年齢が平均的に高いことから,一家の主婦である女性が家計のために働いていること,また夫のいない女性も何人かあったことから,自身の収入が一家の主収入であること等が考えられる.また,事務織女性は,高収入の仕事につくということをそれほど重視しておらず,仕事をもつこと自体に魅力を感じていて,能力的・体力的にも自分に適した仕事をしたいと考えている傾向がある.両ドライバーとも,高収入であることを就職の動機にあげており,事務職との違いを見ることができる.

性格的には大きな違いは職種間でみつけることはできなかったが,ドライバーの方がやや行動的な性格であることがわかった.多くのドライバーが"机の上ばかりで仕事をするのは退屈だ"としており,こうした気持ちを持つものには,会社の外に出て行ける仕事の方が,やはり向いているのかもしれない.特にタクシードライバーについては,YG性格検査質問項目による分析で「支配性」が出ており("人の扱いがうまい"に肯定的),このような性質を持ったものは,事務職のような補佐的な仕事をするよりは,一人でできる仕事であるドライバーの方が向いているといえる.

5. 結論

事務職の女性は,収入も大事ではあるが,あまり肉体的・精神的につらくない仕事であることを求める傾向が強い.集配ドライバーでは,若年層が多く,大部分は家族と同居しており,自収入は家計の中でそれほど重要でないため,職業に対してはお小遣いを稼ぐ程度の意識であることが推測される.高収入を求める傾向も強いが,年齢の割に転職回数が多く,性格的に活発であることが良くも悪くも影響していると思われる.良い点としては,万一転職をしても,すぐに新しい環境に適応することが可能であること,悪い点としては,一定の職業にとどまることができにくいこと等が考えられる.一方,タクシードライバーは年齢が高く,家計を支えるという意識をもっており,職業に対しては非常に積極的である.

性格的にはドライバーは,事務職と比較すると行動的といえる.ドライバーは会社の外へ一人で出て行く仕事であるため,活発で,マイペースで仕事をすることの好きな女性に向いているといえる.

"男社会"に入ることについて女性達は特に力んでいるわけでもない.女性の就業意欲は全ての業界に向けられているといっても大げさではないだろう.企業側の受け入れ態勢が整えば,さらに多くの女性の運輸業界への進出が見込めると思われる.女性の進出が遅れていた業界で,おそらく整備されていないだろうというもの,設備・制度等の改善の予知があるものを以下に述べる.

◇女性専用のトイレ,シャワールーム
◇休憩室
◇女性用の車両としてパワーステアリングを備えたオートマチック車
◇重度の肉体的負担を選らすための機械化
◇結婚・出産のバックアップ(再就職が簡単にできるような)制度
◇子供の世話がきちんとできるような就業時間の設定
◇就労状況に見合った給料


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