早稲田大学石田研究室


一眼レフカメラの操作性に関する一研究
写真撮影時に生じる手ブレの振動波形解析

加藤 麻樹


1. 目的

カメラの普及により,日常生活の中でもシャッターを押す機会が増えてきたが,撮影をする人によって出来上がる写真の状態は良いものと悪いものとに分かれる.中でもよくカメラの初心者が起こす失敗が手ブレであり,撮影者はこれを重さや,カメラの形状が原因していると訴えることが多い.
 しかし,手ブレが生じるのは重いカメラを使用したときに限らず,手ブレにはその他の要因が関係していると思われる.
 手ブレは写真撮影において致命的なミスであり,よりよい写真をとるためにはこれを解決する必要がある.
 本研究では,この手ブレを研究対象として,手ブレがいかなるメカニズムで生じているかを明らかにし,さらに手ブレに対処する方法を検討することを目的とする.

2. 方法

2種類のカメラ(CANON F-1, RICOH XR-P)を使用し,図1に示すようなシステムで,上下,左右,前後方向の振動を加速度計で取得する.

被験者は大学生ほか45名(男性:20名,女性:25名)であり,その眼球の高さに調節した被写体を,1/2秒に統一したシャッタースピードで自動露出を使用して撮影する.

実験システム
図1 実験システム

取得した加速度データは,FFTによりパワースペクトル化する.このときのサンプリング周波数は100Hzであり,人間が生じさせていると思われる10.0Hz以下の周波数の振動に着目する.

3. 結果

解析では,得られたパワースペクトルの低周波数域(0.0〜8.0Hz)におけるテープのワウフラッタノイズや,サンプリング時のノイズ,カメラの内部に生じる機械的振動を除去し,人間によって生じた振動のピーク値に着目し,その度数分布を図2に示すようにまとめた.

図2中の横軸はピーク周波数の最小値を示し,それぞれのレンジは0.5Hzである(例:3.0Hzならば,レンジは3.0〜3.5Hzとなる).

ピーク周波数の度数分布
図2 ピーク周波数の度数分布

これによると,1.5〜2.0Hzにおいて高い頻度を示しており,この約0.5〜0.7秒で上下する振動が生じていることを意味している.また,その分布が機種により異なることも特徴となっており,F-1は1.5〜2.0Hzをピークに横に広がっているのに対して,XR-Pはかなり不規則なピークを示している点で差異が見られる.

この他に求めた度数分布の中で,初心者と経験者との差異をよくあらわしたものがあるが,初心者の場合は1.5〜2.0Hzの低い周波数でピークを示しているものが多いのに対して,経験者の度数分布には比較的大きな分散が見られ,平坦な度数分布を形成している.

4. 考察

度数分布全体を示した結果から,多くの撮影者が1.5〜2.0Hzというゆっくりとした速度でシャッター操作を行っており,このときの振動はシャッターにかけられる力の方向である上下方向のみならず左右,前後方向においても生じていることがわかる.
 上下,左右方向の振動は,シャッター操作のためにかける力が強すぎること,その方向が一定の方向,つまり上下方向に保たれていないことを原因としていると考えられる.
 前後方向の振動は低周波数域において目立っており,カメラを支持する体の動きが直接カメラに伝わることで生じると思われる.
 また,人間に常に生じているマイクロバイブレーションの周波数が,ちょうど今回の研究対象とする周波数域に重なっていることから,これが上記の振動と共に計測されていると思われ,ピーク以外の範囲で生じている細かい振動はこれが原因と考えられる.
 ただ,これらの振動のうちで最もブレに影響を与えているのはシャッター操作によるものであり,この操作が適切に行われることが求められる.
 結果においてカメラの構造感に生じた差異は,総重量が1163gのF-1の場合よりも,701gのXR-Pの方がより広い範囲の周波数域で振動を生じさせていることを意味している.これは軽量のカメラの場合,シャッター操作により生じる振動が,そのカメラに大きく伝わりやすいために生じる差であると思われる.
 初心者と経験者との結果を比較した結果から,初心者の場合,その多くが"おそるおそる"とシャッターを押しながらも,強く押しすぎるなどの余計な振動を起こしてしまうのに対して,経験者の場合は自分なりの速度でシャッターを押してはいるものの,そのときにかける力が最小限にとどまっており,余計な振動を生じさせることはない.よって撮影の際にシャッターを押す操作について自分のスタイルを持つことが手ブレを防止する方法の一つということができる.

5. 結論

写真撮影において生じる手ブレの原因を以下に示す.
 1)シャッター操作に伴う上下,左右方向への振動
 2)上半身の前後方向への振動
 3)マイクロバイブレーション

手ブレの最も大きな原因は,シャッター操作であるが,ほとんどの撮影者は0.5〜0.7秒程度の時間でこれを行い,1.5〜2.0Hzのゆっくりとした振動が生じることが多い.上下方向の振動を抑えるためには,シャッターにかける力をスイッチが入る程度の適切な大きさにすることが必要である.また,このときシャッターを押す方向を上下方向に保つことも必要であり,不規則な方向にシャッターを押してしまうと左右方向の振動が生じることになる.前後方向の振動に対しては,下半身を安定させる際に,左右方向のみならず前後方向も意識しながら上半身を安定させる必要がある.さらにこのとき使用するカメラは軽量のものよりもある程度重量を持ったカメラを選ぶことが望ましく,一概に軽いものがよいとは言いがたい.


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