早稲田大学石田研究室


ステアリングホイールまわりのコントロールリーチに関する一研究

大野 文子


1. 目的

自動車はより多くの人々が安全に使いやすく操作できることを目的として作られている.しかしながら,小柄な人では,シートが体に合わないために座布団やクッション等を運転席に持ち込まないと十分な視界を得られないという声も聞かれ,必ずしも全ての人に適応しているとは言いがたいのが現状である.本論分で扱う,ライト系各スイッチやターンシグナルスイッチ(またはレバー)は,安全上最も重要な操作装置であるが,配置されている領域の規定範囲はステアリングホイール面からステアリングホイール軸に対して平行に車両前方方向へ170mmと広い.したがって,今回の研究では,安全上特に重要と思われる右ストークコントロールにおける手の小さな人の操作性について考察することを目的とする.

2. 方法

1)調査:各自動車販売会社を訪問し,現在市販されている乗用車のステアリングホイールと左右ストークコントロールの機能的現状について調査した.

2)実験:
被験者:右手第III指長が50%タイル(7.5cm)以下の普通自動車免許を保持する女子大生26人.

実験システム:三菱ディアマンテのストークコントロール部分が前後にスライドする実験装置を製作し,ステアリングホイールからの直線距離を10.5cm(0位置)〜11.5cm(1位置)〜12.5cm(2位置)と3段階に変化させ,各段階で,ストークコントロールを上げる,下げる,P(パッシング)のために引くの3つの操作をすることによって,操作可能な距離を測定する.同時に,各段階,各操作時の操作しやすさについてSD法による主観評価も行った.

3. 結果

各位置における下げる前後の平均値
図1 各位置における下げる前後の平均値の比較(横から)

4. 考察および結論

国産車と外車の各計測箇所の平均値を比べると,外車のほうが国産車よりも大きく,各測定箇所の最小値や特に最大値は外車の占める割合が多い.右ハンドルになっている車でも,各ストークコントロールの位置は左ハンドルの状態から変わっていない車が多かった.

したがって,左右ストークコントロールの位置が異なること,走査装置が大きめに作ってあること,操作機能およびその使用方法が異なることなどから,初めて外車に乗る場合の混乱は少なくないだろう.

一方,国産車については,ストークコントロールの通常位置に関して,5社の平均値はほぼ同じである.しかし,右ストークコントロールをアッパービーム状態にした場合,トヨタ・マツダ・日産の3社に差が見られた(操作方法を異にするホンダ・三菱を除く).

操作方法に関してだが,全ての操作方法が統一されているわけではなく,中には同一操作方法によって異なる機能を行える場合もある.この場合,誤って操作することによって安全上重大なミスになることはないが,予期せぬ動きが運転者の心理に与える影響は小さくないと思うので,できるだけなんらかの統一性を持たせるのが良いのではないだろうか.

ストークコントロールは様々な操作装置をつけて太くなりがちであるが,ストークコントロール上にはターンシグナル・アッパービームの二つの操作装置を設置し,その他の機能は計器盤・メーター周辺部に配置しそれ自体を細くすることによって,操作性や安全性が高くなると思われる.

どの位置どの操作に関しても,ステアリングホイール先端のランドマークから指先までの距離はほぼ同じである.指先を当てる場所がどの場所においてもほとんど変わらないことから,何かを操作するときには,やりやすい指の位置というものがあると考えられる.ただし,指先からステアリングホイール・ランドマークまでの距離は約1cmである.実験機材のストークコントロール直径は約2cmであるから,どの位置においても指先ぎりぎりの部分をあてていると考えられる.

ステアリングホイールからストークコントロールまでの距離が多くなるにつれて,第I指長のつけねは車両外側へとずれている.このことから,ストークコントロールが遠くなると,大I指長のつけねの位置を外側へずらし,それでも動かしにくくなった場合,手をステアリングホイールから離して操作することがわかる.本実験の被験者のような手の小さい人にとって12.5cmは円滑な操作を行いにくい距離であると思われる.

ストークコントロールを上げるときには指先は先端にあるのに対して,下げるときには先端から2cmほど根元に近い位置にあてていることがわかる.これは,力を入れるために指先を曲げているためと考えられる.

上下操作時は,操作の前後で必ず第I指長つけねの移動が行われていることが<横から>の図よりわかる.指のみでの操作が不可能であったため手までも動いてしまっているからである.通常ストークコントロールの上げ下げはターンシグナルを出すとき,つまり直進状態時に行う操作であるため,その操作を行うことによって,ステアリングホイールが回転するのでは危険である.しかし,実際は直進状態時においてもステアリングホイールの微調整を行いながら運転しているので,ターンシグナルスイッチ作動に伴うステアリングホイールの回転はその中で修正されていると考えられる.

P操作時においては,上下操作時に見られたような操作に伴う第I指長つけねの動きはほとんどない.2位置において上下方向に5mmほどの移動が確認できるがこれはP操作を上へ引き上げるようにして行わなければならなかったために生じたことであると思われる.さらに,どの位置においても第I指長つけねの車両外側への移動が上下操作時よりも大きい.これは,上下操作ではストークコントロールに指をかけるだけで操作が可能であるのに対して,P操作では引くために指をひっかけなくてはならないためであると考えられる.

主観アンケート調査によって,0位置<1位置<2位置で動かしにくいという結果を得た.本実験で設定した範囲ではストークコントロールがステアリングホイールから遠くなるにつれて操作はしにくくなる.また,P操作は上下操作よりも動かしやすいという結果が出た..これほどの位置においても上下操作時に比べてP操作時の第I指長つけねの移動が少なかったためと思われる.手をステアリングホイールから離して操作した被験者は,1位置のP操作で1人,2位置の上下操作で4人,P操作では2人であった.

操作方法には個人差があるだろうが,全ての人がステアリングホイールに指をかけて操作しうることを理想とするならば,少なくとも0位置(10.5cm)以内にはストークコントロールを設置する必要がある.市販車の平均値は8.15cmであるから市販者の大半は今回のような手の小さい人にも操作しやすい範囲でつくってあると思われる.しかしながら今回の調査結果の最大値は12.7cmであった.これは今回の実験の2位置に近いものであり,アッパービームからロアービームへの急速な操作はしにくいと考えられるので,何らかの改善を必要とするだろう.実験後の感想として被験者の多くはストークコントロールが太いと操作しにくい,ストークコントロールの抵抗が大きいと操作しにくいと答えた.以上より,ストークコントロールは細めで操作するのにあまり力を要しないものが操作しやすいのではないかと考えられる.


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