早稲田大学石田研究室


踏切道における歩行者および自転車交通の実態調査
実態調査および通行者アンケート調査による一考察

安藤 美恵


1. 目的

わが国における鉄道運転事故のうち,踏切での事故が占める割合は約60%である.鉄道の安全な運行のための対策として,踏切の立体交差化および統廃合,踏切の構造の改良,踏み切り保安設備の充実などの鉄道側からの安全対策が推進され,踏切全体としては踏切での事故は減少傾向にあるが,より一層の効果を期待するためには,道路側通行者の立場から見た踏切通過時に実態の解析による安全対策の実施が求められている.

こうした状況を踏まえて,この調査研究では,踏み切りの構造や遮断状況などの鉄道特性および踏切特性と,踏切通過交通量などの道路側交通特性の実態を計測すると共に,道路側通行者のうち,特に歩行者と自転車が上記の特性のどの条件に対して危険感を持つのかを調べ,その危険感が実際に踏切での事故につながる原因となるのかを分析し,踏切での事故を防止するために効果的な安全対策への提案を試みることを目的とする.

2. 方法

1)調査対象踏切:以下の4踏切を選出

調査対象踏切

2)鉄道側交通と道路側交通のビデオ調査:ビデオ撮影による調査対象踏切の遮断状況などの鉄道側交通と,踏切通過交通量などの道路側交通の計測
3)道路側通行者のアンケートによる主観調査:調査対象踏切の付近住民に対する踏切通過時の危険感に関するアンケート調査

3. 結果

本調査において,歩行者と自転車の踏切通過状況に最も影響を与えた,各調査対象踏切の総遮断時間のグラフを図1に示す.

各調査対象踏切の総遮断時間
図1 各調査対象踏切の総遮断時間

次に,各調査対象踏切の総遮断時間が長い時間帯における歩行者の通過状況を表1に,各調査対象踏切の通過数が多い時間帯における自転車の通過状況を表2に示す.

表1 歩行者の通過状況(単位:%)
歩行者の通過状況

表2 自転車の通過状況(単位:%)
自転車の通過状況

4. 考察および結論

1)遮断状況と道路側通行者の関係

鉄道側交通と道路側交通の関係を考えてみると,「遮断時間が長い」,「遮断回数が多い」という遮断状況の踏切では,遮断により通行できなくなることを避けようとして,踏切上を走って通過する人,警報時に通過する人,および遮断時に通過する人が多くなる.また,「警報が鳴り始めてから列車がくるまでの時間が長い」という遮断状況の踏切では,列車が来る前に通過してしまおうとする気持ちから,警報時に通過する人,遮断時に通過する人が多くなる.しかし,列車が車での時間の大小には差があるので,列車がまだこないだろうと安易に遮断時に通過することは非常に危険である.以上の傾向から見て,通行者の直前横断による事故を防止するためには,遮断時間の適正化が望まれる.長すぎない遮断時間にするために,警報機を作動させるときに列車を検知するシステムを適切な位置に設置するなどの措置が必要である.また,警報機は列車の来る方向を正確に指示しており,それによって,通行者が遮断時間をある程度予期することができることが必要である.一部踏切で導入されている,列車が近づくとそのことを表示したり,警報音が速くなることで示したりするようなシステムも,通行者が列車の到来を認知するという意味では効果があると思われる.

2)歩行者用通路内での歩行者と自転車の関係

踏切上を歩行者と自転車が通過する場合に,通行者は車道の自動車を避けようとして,歩行者用道路内を通過しようと努めている.どの踏切も遮断機が開いた直後には通路内が非常に混雑して通過しにくい.このときに,通行料が非常に多い踏切では,歩行車両道路が両側にあり,ある程度広く設けられてあっても,歩行者と自転車が対面して混雑し,特に自転車は乗ったまま通過できずに降りて通過したり,車道にはみ出して通過するなど,かなり通過しにくいと思われる.また,歩行者用通路がない踏切では,通行者は道路幅員の端の方や,線路上を通過している.このときに自動車も同時に通過している場合には歩行者や自転車と自動車が非常に接近していて,かなり危険である.歩行者と自転車が自動車を避けて安全に通行するためには,歩行者用通路が車道と縁石などの物理的な手段ではっきりと区別されていることが望ましいが,この通路が通行量と比較して狭い場合には,車道側に避けられない分だけ,通路内が混雑して,特に自転車はのったまま通過できずに降りて通過するなど,通過しにくいこともある.そこで,踏切上の歩行者用通路内の交通を円滑に進めるためには,車道と歩行者用通路が物理的に区別され,なおかつ,歩行者と自転車が余裕を持って通行できるだけの適切な広さを持った歩行者用通路の設置が望まれる.


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送