早稲田大学石田研究室


RSVPにおける眼球運動についての一研究

村上 基


1. 研究目的

電光掲示盤などにおいて,速度を伴った一続きの文章が,流動して提示される事態をRSVP(Rapid Serial Visual Presentation)と呼ぶことにする.RSVP方式の電光掲示板は,過密化した都市空間において様々な場所で用いられており,今後も増えていくと考えられる.

しかし,電光掲示板の中には,表示文字数に対して文字の流動速度が速すぎる,もしくは,遅すぎるために読みにくい装置も存在するようである.本研究は,人間工学的に理想的なRSVP式電光掲示盤を製作するための諸指標を明らかにすることを目的とする.

2. 研究範囲

RSVPのように文字が流動して提示される事態についての読解メカニズムや眼球運動のメカニズムについての研究は全く行われていない.本研究では,実際に用いられている電光掲示盤についての実態調査と異なった表示文字数における読みの最適速度を見つける実験,そして異なった文字数および流動速度における人間の眼球運動についての実験を行った.

3. 方法

(1)調査

町田,立川,新宿,池袋において無作為に選出した電光掲示盤14箇所について,主に,表示文字数と流動速度を調査した.流動速度は1文字が置き換わる速度[ms/1文字]を測定した.測定にはストップウォッチを用いた.

(2)実験1:RSVPにおける文字数と流動速度について

コンピュータディスプレイ中央部に一行分のスペースを設け,右から左に文字が流動して表示されるシステムを用いた.表示文字数は1文字から10文字までの10条件であった.被験者は男女大学生及び大学院生35人であった.被験者に読みやすい速度に調節してもらった.

(3)実験2:RSVPにおける眼球運動について

実験1と同じシステムを用いて,RSVP事態における人間の眼球運動(EOG)を測定した.表示文字数5,10,20,30文字それぞれにおいて3種類の速度,1.限界最高速度,2.読みやすい速度,3.じれったい速度の12条件で,それぞれにおいて1分間読みつづけてもらい,左右のサッケード運動と瞬きの回数を測定した.被験者の頭部を動かないように固定し,被験者とディスプレイの距離は55cmで統一した.

4. 結果・考察

○調査結果

表1 調査結果
調査結果

実際に調査を行ったRSVP式電光掲示盤14種類における表示文字数の内訳は,3文字から14文字までのうち,8種類であった.それに対応する表示速度は,200ms〜500msの間に収まった.
 表示文字数と表示速度の間に相関があるかどうかを確かめるために,相関係数を求めてみたところ,r=0.12ときわめて低い相関となった.
 実在する電光掲示盤は,同じ表示文字の装置でも,装置ごとに表示速度が散らばっているといえる.

○実験1

実験1の結果
図1 実験1の結果

表示文字数の対数と読みやすい速度の対数は反比例の関係にあることがわかった.相関係数はr=0.97であった.

○実験2

・表示文字数5,10文字におけるサッケード運動
 5,10文字におけるサッケード運動は,読みやすい速度とじれったい速度については,ほとんどの被験者において見られなかったが,限界最高速度においては,一部の被験者に時折見られた.これは,知らない単語や,文字数が多い一単語が,表示されたときに追いかけようとしたものだと考えられる.

・表示文字数20,30文字におけるサッケード運動
 読みやすい速度とじれったい速度においては,被験者によって時折サッケード運動が見られた.
 限界最高速度において,被験者2名に他の被験者とは際だって回数が多いという特徴が見られた.サッケード左方向,右方向が合計で約300回,1秒間に平均4〜5回起きた.この被験者2名は,限界最高速度をそれぞれ46ms,115msで確定しており,この数値は,被験者14人の中において1番目と2番目に速い.この2名は読み方にいくつかの共通点がある.まず,1秒に4〜5回の規則的な眼球運動を繰り返すということである.そして,左から右へのサッケード運動に要する時間は,右から左へのサッケード運動より短かった.右から左へのサッケードは,高速追跡運動とも取れるようなサッケードであり,このときに被験者は文章を読んでいたと思われる.

5. 結論

(1)実際に用いられている電光掲示盤を調査した結果,表示文字数と流動速度の間には相関関係がほとんどなく,装置ごとに異なっている.
(2)文字数が多くなるほど,読みやすい速度は,速くなっていく.1から10文字までの表示文字数の対数と読みやすい速度の対数は反比例の関係にあった.また,読みやすい速度は,表示文字数2文字と3文字を境に大きく変化する.
(3)RSVPにおいて,表示文字数・流動速度に関わらず,眼球は,基本的に一点を注視して読む傾向がある.何かの原因によって一時的に読みにくい事態が生じた際,文字を追う.ただし,速読が極めて得意であるものは,相当速い速度で流れる文章も,頻繁に左右方向のサッケード運動を行いながら読むことが可能である.


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