早稲田大学石田研究室


日本の道路標識の国際的情報伝達に関する一研究−日米比較調査

依田 信一


1. 目的

近年,日本は,経済的分野における貢献はもちろんのこと,湾岸戦争での掃海艇派遣等あらゆる分野で世界の中心に位置し,世界の平和・発展へ貢献することが期待され,世界における日本の役割は大変大きく,日本は世界の日本へと変化した.

しかしながら,国内に目を向けてみると,国際的地位,それに伴う外国人入国者数の増加にもかかわらず,国際的国家日本と名のるにはあまりにも不十分な状態であり,単一民族国家論に支配され,日本国家・日本人は,日本に存在する少数民族や,外国人に対し,その存在を無視し,日本民族に同化させるように仕向けてきた.

そして,このことは道路標識についてもいえ,昭和38年の大改訂以降,道路標識の国際的情報伝達性に関する実験は行われていない.そこで,日本の道路標識が,日本的観点のみならず,国際的観点からとらえた場合も,普遍的であり,その真意を示しうるものであるかどうかを,日本の道路標識の国際的情報伝達性をはかる一例としてアメリカの道路標識の持つ国際的情報伝達性と比較検討することから,国際的道路標識としての日本の道路標識の持つ情報伝達性を検討し,国際的普遍性の高い道路標識を作成することにより,日本において世界の全ての人々が,安全に,快適に,迅速に,そして容易に運転できる交通環境を構築することに役立てることを研究の目的とする.

2. 方法

海外での生活経験およびアメリカでの観光旅行等がなく,意識的にも無意識的にもアメリカの道路標識とその意味について学習経験がなく,1年以上経過している日本の第一種運転免許を保持し日本国籍を有するもの100名(男性:69名,女性31名),および来日等により意識的にも無意識的にも日本の道路標識とその意味について学習経験がなく,半年以上経過しているアメリカ合衆国ワシントン州発行のCクラスのドライビング・ライセンス(日本の第一種運転免許証に相当)を保持しているアメリカ国籍をもつもの50名(男性:21名,女性29名)を選出する.そして,この日米の各被験者に一対一の面接法により,22個の日本の道路標識の写真とそれぞれの日本の標識に対応する22個のアメリカの道路標識のカードを一枚ずつ数秒間提示し,各々の写真及びにカードに対し,被験者にその標識の持つ意味を推測・判定させる.なお,被験者の意味の判定に対する回答は任意の語とし,同一内容の回答を何度使用することもよしとする.また,刺激となる日本及びにアメリカの写真そしてカードの順序による判定への影響を無くすため,日本とアメリカの道路標識群の提示順序,ならびに各標識群における各標識の提示の順序はランダムとする.

また,標識は日本国警察庁交通局監修の交通の教則,及びに同局監修のもとに外国人のために発刊された英語版のRules of The Road,さらに,アメリカ・ワシントン州およびカリフォルニア州・運転免許局発行のドライバーズ・ガイドを参考に,以下の合計22個の道路標識を使用する(以下,同番号を使用する).

《規制標識11個》
 1.車両進入禁止,2.大型貨物自動車等通行止め,3.指定方向外進行禁止,4.指定方向外進行禁止,5.転回禁止,6.追い越し禁止,7.高さ制限,8.最高速度,9.追い越し禁止,10.徐行,11.最高速度

《警戒標識9個》
 12.一方通行,13.徐行,14.一時停止,15.十字道路交差点有り,16.右方屈曲有り,17.踏み切り有り,18.学校,幼稚園などあり,19.下り急勾配あり,20.道路工事中

《指示標識2個》
 21.横断歩道,22.自転車横断帯

3. 結果

日本の道路標識の自国の人々に対する正解率を図1,他国の人々に対する図を正解率を図2に示す.また,日本の標識の正解数にカイ2乗検定をしたところ,自国の人々に対する正回数では規制標識群,1, 3, 4, 6, 7, 9, 13, 14, 15, 19, 20, 21, 22において有意差が見られ,他国の人々に対する正解数では,全標識群,規制標識群,指示標識群,2, 3, 4, 5, 6, 9, 10, 11, 13, 14, 15, 16, 19, 21, 22において有意差が見られる.

自国民に対する正解率の分布
図1 自国民に対する正解率の分布

他国民に対する正解率の分布
図2 他国民に対する正解率の分布

4. 考察

日米の道路標識間で有意差がでた主な原因を下記に述べる.

1,9,11の標識間の差は,標識の構成要素として文字が存在するかしないかであり,人間の情報処理容量を越えない国際語の存在は,他国民に対する標識の情報伝達性を向上させる.

3,4の標識間の差は,色彩の配色からくるといえる.赤は禁止,黄色は注意等,色彩は国際的に共通する意味合いを持ち,色彩の配色によっては,他国の人々に全く違う情報を与えかねず,他国民に対する標識の情報伝達性を向上させる上で大変重要な要因である.

21,22の標識間の差は,日米の交通環境の差からくるといえる.いくら自国民に対し優れた標識を作り上げたとしても,それが自国の交通の特殊事情が背景になるものでは,国際的情報伝達性は低く,国際的情報伝達性の向上を考える上で,自国と他国との交通環境の差異の比較検討が重要といえる.

2,5,6の標識間の差異は,標識のデザイン上の差異からくるといえる.これらの標識のデザイン上の差異は図と禁止表示の積み重ねの順序だけであったが,その正解率には大きな差が生じ,デザイン上の些細な差異も他国民に対する情報伝達の向上を考える上では,十分な配慮を払うことが必要とされる.

5. 結論

日本の道路標識の自国民に対する情報伝達性は,妥当であり大きな問題はないといえる.しかし,アメリカ人に対する情報伝達性(国際的情報伝達性)は低く,特に交通安全をはかる上でもっとも重要である規制標識においては,アメリカ人への正解率が3割をわり,日本の道路標識は,他国の人々が日本の道路を安全に運転するために十分な情報伝達性を有していないといえ,早急に改善されることが望まれる.

また,他国民に対する情報の伝達性を向上させるために,道路標識を改善する上で重要と思われる要因として,1,9,11で観察されたような国際語の付加等の文字要因,3,4で観察されたような色彩のもつ意味への配慮等の色彩要因,21,22で観察されたような日米の道路環境の差異等の交通環境要因,2,5,6で観察されたような道路環境のデザイン等の図形要因等をあげることができる.


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