早稲田大学石田研究室


リーダーの能力がチーム作業のパフォーマンスに及ぼす影響

陣内 明子


1.はじめに

産業の発展とともにそのシステムも巨大化し,多くの場面においてチームによる作業がなされている.チーム作業においては,その役割分担が作業のパフォーマンスやチーム内の人間関係に非常に重要なものとなっている.特に,航空機のクルーにおける機長と副操縦士の関係に代表されるようなチーム内でのリーダーとフォロワーの関係において,役割意識がそのコミュニケーションに影響を及ぼしていると考えられる.

本実験では,チーム内のメンバー間でリーダーの役割と能力が合致している場合,合致していない場合と,合致していてもメンバー間の能力に勾配がない場合の3パターンのチーム編成を行い,その違いでコミュニケーションや作業パフォーマンスにどのような影響がみられるのかを検討した.

2.実験

被験者:大学生30名(男23名,女7名)
器具:デジタルカメラ,ICレコーダー,ZOID BLOX4体
課題:ZOIDS BLOX(TOMY社)を用いて,4体のブロックスから別の1体のブロックスを組み立てる作業を2人からなるチームで協力して行う.
手順:本試行で行うのと同じ作業を1回行う練習試行を課した20名を「経験者」,他の10名を「未経験者」と位置づけ,表1のチーム編成を行い,各組み合わせにつき5チームずつ実験を行った.

表1 チーム編成
チーム編成

3.結果・考察

3−1.試行時間,作業担当率,総発話数

いずれにおいても,役割,組み合わせともに有意な差はみられなかった.

3−2.発話における役割・組み合わせの効果

得られた発話のデータをプロトコル分析表に記録し,TADEMに用いられる分類を参考に図1,2の11種類に分類した.

役割の効果
図1 役割の効果

組み合わせの効果
図2 組み合わせの効果

図1より,「指示」「説明」において,組み合わせに 関係なくリーダーの方が「指示」「説明」を行っており,「指示要求」はどの組み合わせにおいてもほとんどみられなかった.また図2より,C-Dにおいて「提案」「独り言」が多用されていたので,この「提案」「独り言」について発話の具体的な内容をプロトコル表を参照し検証してみたところ,「提案」は「指示」と同様の意図を,控えめに表現しようとする意図で用いられ,「独り言」は自分の状態や意図を相手に消極的に伝えようとする意図で用いられていたと考えることができた.これらを併せて考えると,チーム内に役割を設定されると発生する役割意識により権限を逸脱するような働きかけは行なわれず,さらにリーダーの方に期待される能力が備わっていない場合には指示やチーム内の意思表示の表現が弱まったりあいまいになったりしてしまうといえる.

3−3.「質問」項目の分類の結果

「質問」項目についてさらに詳細な分析を行った結果,「作業方法についての質問」の回数は未経験者のB,Cは同じように情報量が少なかったのに対してリーダー役割を担ったCはBの58%であった.これは役割意識の影響であるとみることができ,不明点を解決しないまま作業を進めるという問題を示唆すると考えられる.

3−4.作業の効率化について

本実験で課した作業では,共同作業・分担作業の流れ,部品の分類の有無,メンバー内の担当部位の決定が効率化するためのポイントであったが,経験者をリーダーとしたA-B,E-Fで作業の効率化への取り組みが多くみられた.

3−5.最終的なエラーについて

本実験では被験者による完成の判断で作業終了としたが,作業終了後の最終的なエラーを犯したのは15チーム中E-Fの2チームであった.これは,最終確認を分担作業にて行ったためエラーが見過ごされたこととフォロワーによる指摘があったがリーダーがうやむやな対応できちんと対処しなかったことが原因であった.

3−6.アンケート結果について

実験終了後に行った15項目5件法からなる精神疲労度を調査するアンケートの15項目について相関行列を求め,続いて主因子法により因子構造を求め,バリマックス回転を行った(累積寄与率:64.8%)結果抽出された4つの因子を注意力・気分の低下関連項目,継続意欲関連項目,対人関連項目,覚醒・のんびり感関連項目とした. 図3,4より,精神疲労に関しては注意力・気分低下関連,対人関連項目においてC-D特にDで高くなることがわかったが,A-BとE-F間に有意差はなかったことからチーム内に未経験者が含まれてもコミュニケーションがうまくいけば疲労度に大きな影響はないということがわかった.

注意力・気分低下関連項目
図3 注意力・気分低下関連項目

対人関連項目
図4 対人関連項目

4.まとめ

役割が適切でなくリーダーの能力が不足している場合には,指示や意思表示が弱くなる,不明点を解決しない,効率化への取り組みが弱い,精神疲労度が高まるという問題が生じ,経験者の方も役割がないと自分の知識や経験を発揮できにくい.

役割と能力が合致している場合で,未経験者を含みメンバー間の能力に勾配があるパターンと経験者のみからなり能力に勾配がないパターンを比較してみると,作業の成績,総発話数,分類した発話の回数に有意な差はみられなかったが,勾配がない方が「提案」「独り言」の回数が多くみられ,また無言時間帯が顕著に多かった.これらは一瞬の判断を強いられるような状況下では指示や判断の遅れを生じさせる要因に繋がる可能性となりうると考えられる.また最終エラーの結果からは,役割意識とチームとしての過信がチェック機能の甘さや責任感の分散を招いたといえるであろう.

このように,優秀な人物を揃えたとしても必ずしもエラー発生率の低下や高い成績を達成できるとは限らない.作業の難易度や危険度にもよるが,「緊急時に強い指示命令が下されなければならない」等のそれぞれの現場の特性を踏まえた上で能力のあるリーダーが適切なリーダーシップを発揮できるようなメンバー間の能力の勾配を考えた人員配置を行い,さらにコミュニケーション訓練を取り入れて役割が「権威」となって障害になってしまわないようなマネージメントを行う必要がある.

【参考文献】

F.ホーキンズ 黒田勲:ヒューマンファクター −航空分野を中心として−,成山堂書店,1992


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