早稲田大学石田研究室


無信号交差点における自動車の動きに関する研究

北澤 武明


1. はじめに

無信号交差点における出合頭事故は,発生件数の多い事故類型である.無信号交差点は主に一時停止規制によって優先関係が定められていることから,非優先側運転者の行動が注目されやすい.しかし,事故は単一の要因のみで発生することは非常にまれであることから,優先側運転者や環境・車両要因についても検討する必要がある.ところで,無信号交差点通過時の優先側運転者の行動を分析した研究では,優先側運転者の行動パターンは大きく2つに分けられるとされている.すなわち,1)交差車両を発見するが,相手が止まると判断して,等速で交差点に進入する,2)相手がいても止まると判断して,等速で進行し安全確認なく交差点に進入する,というものである.こうした特性は,交差点環境(車線数や見通し等)によってほとんど影響を受けないことが報告されているが,出合頭事故の分析に基づくものであり,この特性は事故を起こさなかった運転者を含めた,一般的な交通行動であるとはいいきれない.そこで,本研究では優先側運転者の交差点進入行動を調査し,交差点環境により行動が変化するかどうかを検討した.

2.調査の概要

調査日時は,2001年12月7日,10日,11日,12日の4日間で,調査時間は14時〜16時である.対象交差点は,見通しと車線数を組み合わせた4交差点であり,いずれも直行する十字交差点である.

 ・交差点A:1車線×2車線,見通し悪い
 ・交差点B:1車線×2車線,見通し悪い
 ・交差点C:1車線×2車線,見通し普通
 ・交差点D:1車線×1車線,見通し悪い

なお,交差点B,Cは交差点内までセンターラインの引かれている優先道路である.
 調査方法は,交差点をビデオで撮影し,通過した優先側車両について減速・一時停止の有無,安全確認の有無,進行方向を調べ,別途,対向車,交差車両,歩行者の有無を調べた.調査には専用のチェックシートを作成し、使用した。
 分析は、シートからそれぞれの項目について台数を数え、表を作成し、検定を行った.検定にはχ2検定を用いた.

3.結果及び考察

3-1.全体的傾向

交差点A,B,Cでは,等速進行の割合が多く,安全確認を行わない人の割合が多かった(表1).一方で,交差点Dでは,減速をした運転者の数が多く,安全確認を実施するものも多かった(表2).

表1 各交差点での速度変化に対する台数
速度変化

表2 各交差点での安全確認に対する台数
安全確認

χ2検定を行った結果、交差点A・B・Cにおいては減速・一時停止および安全確認をしない傾向が認められた。交差点Dにおいては、減速・一時停止および安全確認をする傾向が認められた。
このような交差点間での行動の相違には,他の道路利用者の存在による影響や,観察対象となる運転者の属性の違い,交差点環境の違いの影響が考えられる.そこで,順を追って検討した.

3-2.他の道路利用者の影響

優先側車両1台あたりの,他の道路利用者への遭遇確率を求めたところ,どの交差点においても大きな差は見られなかった.他の道路利用者に実際に遭遇した運転者は,減速を行う傾向が見られた.

3-3.運転者属性の影響

全交差点を平日の同一時間帯に調査していることから,同じような属性の運転者が通行していたと考えられるが,交差点D付近にはスーパーがあるため,これが影響した可能性は否めない.

3-4.交差点環境の影響

1車線×1車線の交差点では減速が多く行われていた.一方で,1車線×2車線の交差点では,見通しの善し悪し,センターラインが交差点内まで引かれているどうかにかかわらず,等速・減速行動の割合には差が見られなかった.このことは,2車線の道路を走行していること自体が,運転者に優先意識を持たせ,交差道路に注意を向けさせにくくしている可能性を示唆することから,今後さらに検討が必要であろう.

4.結論

・他の道路利用者の影響は、実際に遭遇した人に影響するのみで、遭遇しない人たちには影響しない
・交差点Dは、運転者属性が異なっていた可能性がある
・運転者は1車線×1車線の交差点に進入する際、減速および安全確認をする傾向にある
・運転者は1車線×2車線の交差点に進入する際、センターラインの有無および見通しの良悪に関わらず、等速で進入することが多い
・2車線の道路を走行すること自体が、運転者に優先意識を持たせ、交差道路に注意を向けにくくさせているといえる

5.今後の課題

通過しようとしている交差点へ注意を払う方法には、速度変化と安全確認が挙げられると思う.減速・一時停止をして安全確認もすれば,事故を起こすこともなく安全に交差点を通過することができる確率はかなり高いだろう.では、どちらか一方のみ,減速をしていなくても安全確認を行っていたり,安全確認はしてないが減速はしている,といった場合はどうであろう.完全とはいえないにしても,一応は安全に注意を払っているわけである.少なくとも,非優先道路に対する優先意識だけを持って自動車を運転しているとはいえない.しかし,本研究ではその点についてデータを集めることができなかったため,調べることが不可能だった.今後は,この点について検討していく必要があるだろう.

6.引用・参考文献

・クレベルスベルク:「交通心理学」(企業開発センター交通問題研究室 1990)
チ輒劃・А峺鯆粍汰看鮟顱(神ョ11年度版」(大蔵省印刷局 1999)


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