早稲田大学石田研究室


姿勢変化が視覚情報処理に与える影響についての一実験
−眼球−頭部協調運動について−

菅原 淳史


1. 目的

着座姿勢において,上体の角度変化が眼球−頭部協調運動に与える影響を調べる.つまり視対象に視線を向ける際の視線の移動量は眼球運動によるものと頭部運動によるものとの合計量であるが,状態の角度を変化させることによって,この2つの運動の量的関係に変化が生じるのか,その影響を調べることを目的とする.

2. 方法

着座姿勢において5段階の上体角度を設定.それぞれの上体角度において,水平方向(左右方向),垂直方向(上下方向)に表示される刺激に対して被験者に音声反応をしてもらう.この際,眼球運動と頭部運動をそれぞれEOG,VTR撮影によって測定し,デジタルタイマによって反応時間を測定する.

実験システム図
図1 実験システム図

3. 結果

上体を同角度傾斜させた前傾姿勢と後傾姿勢について比較した図を以下に示す.なお,目安として垂直姿勢での数値もあわせて示してある.

前傾・後傾15°における頭部運動振幅(水平方向)
図2 前傾・後傾15°における頭部運動振幅(水平方向)

前傾・後傾30°における頭部運動振幅(水平方向)
図3 前傾・後傾30°における頭部運動振幅(水平方向)

前傾・後傾15°における頭部運動振幅(垂直方向)
図4 前傾・後傾15°における頭部運動振幅(垂直方向)

前傾・後傾30°における頭部運動振幅(垂直方向)
図5 前傾・後傾30°における頭部運動振幅(垂直方向)

4. 考察

4.1. 水平方向での前傾姿勢と後傾姿勢との比較

上体角度が前傾15°の姿勢と後傾15°の姿勢との比較であるが,図2を見ると,前傾15°の方が振幅の値が小さくなっており,姿勢による頭部運動への影響が出ているようである.一方,30°での前傾姿勢と後傾姿勢との比較は図3を見ると,前傾,後傾とも影響が出ているが,その影響の程度は同様で差は見られないようである.

前傾であごをあげておくという姿勢は頭を首の筋肉のみで支える形になり,かなり苦しい体勢であるといえるだろう.それに対して後傾であごを引いておくという姿勢は頭を体の上に乗せるような形となり,首の保持のための首の筋肉の負担は前傾姿勢と比べて少ないと思われる.これが30°という大きな傾きになると前傾と後傾で同じように姿勢の影響を受けるが,15°という小さな傾きでは前傾と後傾で影響の受け方に差が出た要因として考えられるだろう.

4.2. 垂直方向での前傾姿勢と後傾姿勢における比較

図4を見ると前傾15°姿勢は表示位置左右20°を除くと姿勢0°と同じような値の推移を見せている.前傾15°姿勢では上方向の値が他の姿勢より小さく,下方向はほとんど0°である.これは前傾の時はあごを上げ,後傾の時はあごを引くことによって表示機との正対姿勢を保っているので,その時点で前者は上方向の,後者は下方向の頭の動く領域を狭めており,それぞれ上方向,下方向の頭の動きが規制されていることによると思われる.

この姿勢がますます苦しくなる30°前傾後傾姿勢では,図5に示してあるとおり,後傾姿勢は上方向において,前傾姿勢よりも大きな値を示しており,表示位置が強くなるほどその差が大きくなることは,前傾姿勢での上方向への頭の動きの困難さを表していると思われる.

5. 結論

姿勢変化が視覚情報処理に与える影響について,本実験では上体角度の変化によって眼球−頭部協調運動に変化が生じるかということについて検討してきたのであるが,その総合的な結論を以下に述べる.

EOG測定時の設定の影響で,眼球運動による検討は十分であるとはいえないが,上体角度の変化による影響がかなりの部分で確認された.

まず,水平方向では前傾15°姿勢以外で影響があり,前傾,後傾30°では同程度の影響があった.上体の角度の傾きが大きくなるにつれて頭の運動量が少なくなり,目の動きにおう部分が多くなった.

次に,垂直方向では上方向について影響があり,前傾,後傾ともに上体の角度の傾きが大きくなるにつれて眼の運動量が多くなった.上方向は見づらい方向であるが,姿勢の状況が厳しくなるにつれて,より頭の動きが大きくなる傾向が見られた.


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