早稲田大学石田研究室


AF一眼レフカメラの操作性に関する一研究

久保 京子


1. 目的

手ブレが起こらないシャッタースピードの限界は1/60秒か1/30秒であるとされている.これは両手でカメラを保持した際の1/30秒間の手の動きが,約3倍(キャビネ版)に拡大されれば,肉眼で判別できるほど大きい,ということを意味する.
 シャッター操作は保持とは矛盾する力をカメラに加えることによってなされる.露出はこの動作に引き続いて行われるので,手ブレは主にシャッター動作に起因するものであり,カメラの構造上必然的に起こるものであることが予測される.
 そこで,本研究では,シャッター操作が手ブレに与える影響を実験的に検討することを目的とする.

2. 目的

重さ,形状,メーカーの異なる一眼レフカメラ3種類(A・B・C)を用いて,それぞれのカメラで通常撮影とタイマー撮影の2種類の作業を被験者に行わせる.
 シャッターボタンの上に圧力センサーを貼ってシャッターにかかる圧力を計測した.被写体は放射線状に配置されたLEDでフィルムに記録されたLEDの軌跡を拡大し,キビルメータで計測したものをブレ量とした.
 なお,露出時間は計測上の必要から1/2秒とした.被験者は大学生37名(男:17,女:19)である.

3. 結果

通常撮影とタイマー撮影のブレ量の平均値の差をt検定したところ,いずれのカメラでも危険率0.02%で有意差が見られた.
 タイマー撮影のブレ量の平均値を単位として,通常撮影のブレ量を相対的に表したグラフを図1の示す.縦軸の1とはタイマー撮影のブレ量の平均(x)であり,1の上下の点滅は,xにタイマー撮影のブレ量の標準偏差(SD)を加減したもの,つまり,x±SDの領域を示すラインである.なお,横軸は被験者Noである.

シャッター操作の有無によるブレ量の比較
図1 シャッター操作の有無によるブレ量の比較(カメラ:A)

分散分析の結果,カメラによるブレ量及びシャッターにかける圧力の有意差は見られなかった.
 シャッターにかけられた圧力の平均値は,A:1445,B:1165,C:1030(gf/cm・cm)である.図2は圧力データをカメラごとのシャッター操作に最低限必要な圧力(P)で割って,頻度分布を作成したものである.

圧力の頻度分布
図2 圧力の頻度分布

圧力とブレ量の相関関係は0.6〜0.7で,やや高い正の相関が認められた.相関係数のt検定の結果は,いずれも危険率1%で有意差が認められた.

4. 考察

1)通常撮影のブレ量はタイマー撮影のブレ量の平均して約2倍であり,検定によりこの差は統計的に有意であることが明らかとなった.
 これは,露出直前のシャッターボタンを押す,という動作がブレ量に大きな影響を与えていることを示す.シャッターボタンにかける力を吸収しきれず,結果的に露出中にカメラが働いてしまうのだと思われる.シャッター操作はブレを拡大するということが確認されたといえる.

2)図1で,通常撮影時のブレ量が点線の領域外にある被験者はシャッター操作をすることによって,よけいにぶれてしまう人である.その割合は,A:が63%,B:が56%,C:が64%である.言い換えれば,被験者の約6割がシャッター操作が下手だといえるが,「下手」でかたづけてしまうにはあまりにも多すぎる割合である.このような場合,人間でなくカメラの側に問題があるとみなすほうが建設的である.現状のシャッターが洗練されたシステムであることは事実だが,露出中にカメラを動かしてしまう危険性を構造上持ち合わせている点を指摘したい.

3)通常撮影,タイマー撮影ともに,カメラの違いによるブレ量に有意な差は見られなかった.
 実験に用いたカメラは,それぞれ重さが異なり(A:842g,B:1234g,C:1063g),また,グリップやシャッターの形状も違う.それにもかかわらず,ブレ量に差があらわれなかったということは,重さやグリップ,シャッターetc.の違いがブレ量に与える影響が小さいということを意味する.
 一般に,手ブレを防止するにはシャッターやグリップ形状を変え,カメラを軽くする必要がある,といわれてきたが,今回の実験によれば,カメラの形や重さではカバーしきれないほどに,シャッター操作がブレ量に与える影響が大きいといえる.
 また,カメラの機種の違いによる圧力に有意な差はなかった.これは,グリップやシャッター形状などを多少変えても,シャッターボタンに過剰な圧力をかけさせないよう,ユーザーのシャッター操作を誘導することは困難であることを意味しているものと思われる.

4)図2のグラフに示されるとおり,大多数の被験者がシャッター操作に圧力をかけすぎていることが明らかになった.Pの2〜3倍の圧力をかけている者が最も多い.

5)圧力とブレ量の間には,やや高い相関関係が認められた.これは,シャッターボタンにかける力が強いほど手ブレも大きくなる傾向があることを意味する.
 しかし,相関関係がすなわち因果関係とは言えず,この場合も,シャッターにかける圧力が大きくても,カメラの保持が安定してシャッター操作のショックを吸収できれば,手ブレにはつながらない.問題は,訓練をつまない一般ユーザーにこのような技量をどの程度期待できるのか,という点にある.ほとんどの被験者が自己のタイマー撮影(圧力はゼロ)よりも通常撮影のほうが大きくぶれていることから推して,一般ユーザーにはシャッター操作のショックを吸収しきれるほどの技量を期待することはできない.

5. 結論

1)通常撮影とタイマー撮影のブレ量には有意な差がみられた.これによりシャッター操作がブレ量を拡大する主な原因であることが確認された.
2)シャッターボタンにかけられる圧力は個人差によるばらつきが大きいものの,最頻値はシャッター操作に必要な圧力の2〜3倍であり,明らかに押しすぎである.
3)圧力とブレ量の間にはやや高い相関関係が見られ,検定の結果も有意であった.手ブレを防ぐには,あまり力をかけずにシャッター操作ができるようにカメラを変えることが有効であると思われる.


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