早稲田大学石田研究室


老人ホームの室内雰囲気評価についての一実験
−男女による色彩評価の違い−

小野 浩代


1. 実験目的

本実験では,以下の解明を目的とする.
 「老人ホームの室内環境における色彩のイメージが,男女間の性差としてあらわれるか.また,あらわれるのであれば,どのような点で,顕著に見られるかについて.」

2. 実験方法

(1)予備実験

心理4原色といわれる,赤色・緑色・青色及び黄色系統で統一された空間を,居室と廊下について各2枚ずつ合計16枚のイメージ写真をカラーシミュレータで作った.各々のもっとイメージをセマンティック・ディファレンシャル法で評価してもらう.この際に形容詞対は19個選び,評価は5段階で質問紙を作成した.被験者が老人のため,あまり多くの刺激に付いて評価できないということから,予備実験を行った.その結果の因子分析により,因子負荷量が低かった形容詞を除外した.刺激の写真については,黄色系統は写真の影の部分が極端に色が変わるなど,イメージがとりにくい写真であるとの判断から除いた.また,写真で取り扱う色については標準色票に基づいて,天井・壁面・床の配色を決定した.一つのイメージ写真に使った各3色(天井・壁面・床)は,各写真の比較が行いやすくするように同色相の中で明度のみを変えた,いわゆる同系色を選択した.また,その1つのイメージ空間について天井→壁面→床の順で明度を下げていくイメージと,もう一つは順に挙げていくイメージである.以上,居室,廊下共に青・緑・赤について2通りずつのイメージ空間を作り,合計12個の刺激ができた.(予備実験では,黄色のイメージも含まれていたため16個の刺激で行った.)

(2)手順(本実験)

イメージ調査のアンケートの前に,実際に被験者が写真を見て色について判別できるか否かを検査した.
 実際に行ったのは,視力検査と色盲検査及び色彩弁別検査である.視力検査では,矯正視力で0.1以下,色盲検査で色盲と判断されたもの,色彩弁別検査では明らかにその能力が欠けていると判断されたものを被験者から外した.これらの手続きを踏まえてから本実験のイメージ調査を口頭で行った.

(3)被験者

老人:なぎさ和楽苑の入居者,及び通苑者で男性は65〜85歳の12名.女性は71〜93歳の15名.

(4)実施日・実施場所

 実施日:老人 平成2年10月12〜19日
 場 所:老人 なぎさ和楽苑(東京都江東区)


3. 結果

方法で示したように実験を行い被験者からのデータを点数化し各写真における各形容詞対ごとに平均を求めた.結果の全体的な特徴をまとめてみたい.
 赤系の居室の写真3と6は男女共に顕著な形容した多い.とくに女性のほうが顕著にあらわれた形容詞が多いという傾向がある.また,写真9と写真壱拾弐も,赤系の廊下の写真であるが,どちらもカーブが大きく顕著な形容詞が多い.とくに女性のほうが顕著にあらわれた形容詞が多いという傾向がある.
 また検定を行って,顕著に男女差があらわれた形容詞に「広い−狭い」,「重い−軽い」とあるが,これは,「力量」の形容詞にあたる.

4. 考察

なぜ赤という配色において先に述べたような顕著な形容詞があらわれたのかということは,現実的に赤系の配色である建築物が少ないためにあまり目にしたことがないためと思われる.非現実であるからこそ敏感になっているのではないだろうか.女性のほうがより顕著にプラスイメージがあらわれたということから,女性が男色を好む傾向が見られる.また,「広い−狭い」,「重い−軽い」といった「力量」の形容詞に男女差が見られたのは,「力量」の形容詞に対しての男女の持つ意味合いに差があるように思われる.

5. 結論

以上から,次のように結論できる.室内環境におけるイメージについての男女差は,むしろ形容詞によるところが大きい.個人の文化的背景や経験が影響するのは,むしろ形容詞の自分なりの解釈である.とくに力量の形容詞において男性が女性よりも顕著に評価するといったことだった.また,女性の特徴として赤系のイメージに対して顕著にプラスイメージを持っているということも付け加えておきたい.


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