早稲田大学石田研究室


VDT作業時のワークロードによる打鍵エラーの分析

五十嵐 茂


1. 実験目的

本実験が行われる背景には,VDT作業が我々の日常生活に浸透し,利用する機会が増えているのにもかかわらず,その研究分野の中で重要であると考えられるVDT作業での負担と疲労に対する明確な指標が確立されていない,という現状がある.

そこで本実験の目的は,VDT作業時のワークロード(作業負荷)による打鍵エラーを解析することにより,VDT作業での作業負担の評価に関して,パフォーマンスデータを中心とした一つの指標を提起することにある.


2. 実験方法

被験者は専門のワープロオペレータ(全員女性)が3人である.また被験者には資格として「日本語文書処理技能検定3級:日本商工会議所」を取得していることを条件とした.打鍵技術レベルの均一化を図るためである.

被験者の行う作業内容は,日本語ワードプロセッサのかな入力である.実験は,被験者自身の打鍵能力(最大能力発揮時)の設定をするための作業,それを基準に打鍵数による様々なノルマが課された作業,の二つに分けられ,このノルマが本実験における「作業負荷」にあたる.ノルマが与えられている作業に関しては,各作業に対する心理状態・打鍵ペースをコントロールするために,作業開始前にノルマ量を教示し,作業中も経過時間を5分,9分経過時に告知した.

測定項目は,中心指標であるパフォーマンスデータとして打鍵エラー,2時的指標として生理データである心拍を,それぞれ測定・分析した.また各実験後の被験者の状態・感想を知るために,あらかじめ用意した質問紙により内観調査を行うことにした.

3. 実験結果及びその考察

作業負荷率の上昇につれて,打鍵エラーの発生率も上昇する傾向にあった.これにより,自分とコンピュータとの間で,ある一定の作業ペースが出来上がっている専門のワープロオペレータにとって,自分の打鍵能力の範囲内で作業を進めることがいかに能率的であるかが明らかにされた.

またVDT作業の作業負担評価に関してだが,やはり生理的指標を用いるよりも,パフォーマンス指標を用いるほうがより有効的であることが,作業負荷率の変化に伴う,打鍵エラー率と平均心拍数の変動の程度より明らかにされた.

従来の研究でなされていなかった,打鍵エラーの内容に関してだが,筆者は発生した打鍵エラーを8種類に分類し,さらにノーマンの「スリップ理論」を用いて4種類に分類した.その中で「隣のキーを押す」,「周辺のキーを押す」,「隣のキーを同時に押す」という打鍵エラーは,作業負荷量の上昇に伴って,その発生率も上昇する傾向にあった.したがって,これらのエラーの分析は,VDT作業の作業負担評価の有効な指標となりうる可能性を持つと考えられる.

しかし,今回の実験では被験者数が3人と少ないので,上に述べたことは,全て仮説のレベルに止めておくことにする.

4. 結論

本研究の結論として,以下のことが挙げられる.

1)作業負荷量の上昇につれて,打鍵エラーの発生率は上昇する傾向にある.
2)打つべきキーの周辺のキーを打ってしまうエラーは,作業負荷量の上昇に伴いその発生率も上昇する傾向にあったので,作業負担評価の新たな指標となりうる.
3)専門のワープロオペレータは,各自がそれぞれ打鍵ペースを持っており,精神負担面でもパフォーマンス面でも,そのペースで作業を進めることが最も能率的だと考えられる.
4)VDT作業の作業負担の評価には,生理的指標よりもパフォーマンス指標のほうが,より有効だと考えられる.


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