早稲田大学石田研究室


信号交差点通過時におけるドライバーの判断の研究
−後続車の存在が及ぼす影響に関する一考察−

冨田 英之


1. 目的

交通事故は交差点及びその付近で多発し,全交通事故の約60%を占めており,また,交通事故の原因として,ドライバーの人的要因(人間特性)が他の要因よりも圧倒的に大きいことがうかがえる.

交差点及びその付近で発生する追突事故の約50%は信号停止先頭車への追突であり,その追突事故には黄信号に面した交通の流れの中で,停止すべきか通過すべきかの判断の食い違いが影響していると考えられる.

そこで,本調査では黄信号に直面したドライバーの信号交差点通過時の判断に影響を与える多々の要因のうち,自車の車種自車の停止線までの距離,自車の走行速度,後続車の存在の有無が,どのような影響を与えるかを明らかにすることにより交通流の車速,交通流の密集度に対応した信号制御方法の実施の踏み台となりうるための一提案を目的とする.

2. 方法

2.1. 調査場所

高島平二丁目交差点

2.2. 調査対象

信号機の表示が青色から黄色に変わった瞬間に,笹目通り内回りの高島平二丁目交差点から55m以内を走行する直進車両(自動二輪・特殊車両は除く).

2.3. 調査方法

ビデオカメラを使用して調査交差点に進入する車両を後方から撮影し,黄信号開始時における走行車両の停止・通過,停止線までの距離,走行速度を測定する.

2.4. 解析項目

測定結果を基に,ドライバーが黄信号に直面したときの停止・通過の判断に,停止線までの距離や,そのときの走行速度がそのように影響するか,また,小型車と大型車の行動にどのような違いが現れるかをみるために解析を行う.さらに,後続車の存在がドライバーの停止・通過の判断にどのような影響を与えるかを解析する.

3. 結果

本調査において,ドライバーの判断に最も影響を与えた後続車の存在の有無という要因の調査結果を図1と図2に示す.

後続車の有無による走行速度(小型車)
図1 小型車の後続車が存在しない通過車両と後続車が存在する通過車両の走行速度の累加百分率曲線

後続車の有無による走行速度(大型車)
図2 大型車の後続車が存在しない通過車両と後続車が存在する通過車両の走行速度の累加百分率曲線

4. 考察

1)図1より小型車の後続車が存在しない通過車両と後続車が存在する通過車両の黄信号開始時における走行速度の分布は,後続車が存在する通過車両の方が後続車が存在しない通過車両よりも51km/h以上では遅い速度域に分布する傾向が見受けられ,その差は検定を行った結果,90.0%の信頼性で有意差があることがわかった.

このことから,51km/h以上において小型車の後続車の存在の有無という要因は,同じ走行速度において停止・通過というドライバーの判断に影響を及ぼすものと考えられる.つまり,停止線で停止するための十分な減速が可能な速度で走行しているにもかかわらず,通過しているのは,後続車が存在するために通過という判断がなされたものと思われる.

2)図2より大型車の後続車が存在しない通過車両と後続車が存在する通過車両の黄信号開始時における走行速度の分布は,後続車が存在する通過車両の方が後続車が存在しない通過車両よりも51km/h以上では遅い速度域に分布する傾向が見受けられ,その差は検定を行った結果,97.5%の信頼性で有意差があることがわかった.

このことから,51km/h以上において大型車の後続車の存在の有無という要因は,同じ走行速度において停止・通過というドライバーの判断に影響を及ぼすものと考えられる.これは,小型車と同じように大型車の場合も,停止線で呈するための十分な減速が可能な速度で走行しているにもかかわらず通過しているのは,後続車が存在するために通過という判断がなされたものと思われる.

5. 結論

今回の調査において最もドライバーの停止・通過の判断に影響を与えたのは後続車の有無という要因である.このことをいいかえるならば,黄信号に対してのドライバーの判断は,単純に停止線までの距離や走行速度によって停止か通過に分けられるものではなく,交通流の密集度によって大きく左右されるということが明らかにされた.

現在,交通の安全性を図るために科学警察研究所により,車両の交差点への接近速度にあわせた信号制御方法の研究がなされているが,本研究の後続車の存在の有無がドライバーの判断に与える影響の検討結果を踏み台とすることによって,より安全でドライバーの判断の負担を軽減させることを可能とした,高度な信号制御方式の実施に役立つことを望む.


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