早稲田大学石田研究室


老人ホームの室内雰囲気評価についての一実験
−色彩の効果−

田中 幹男


1. 目的

国民的課題となった高齢化社会に対応していくためにこれからどのような老人ホームが求められていくのであろうか.心身ともに疲れない快適な住み心地の良い老人ホームづくり,それは老人ホームに頼らなければ老後をすごしていけない環境におかれる人にとって,関心を持たずにはいられない問題であると思う.

老人の健康,住み良さに直接的なかかわりをもつ室内気候,明るさ,美化は快適さを求めていく上で欠かすことはできないと思われる.しかもその部屋で過ごす人が,生きている喜びと楽しさが少しでも味わえるような室内装備と演出が求められている.

では実際には,どのような色がどこに使われるのが望ましいのだろうか.色によって人が受けるイメージに違いがあるのだろうか.

2. 方法

建築物が老人ホーム,被験者の約半数が老人ということもあって,実験の時間的なペース,質問可能な数に限りがあるため,やむを得ず絞られた実験となった.色は心理4原色のうち黄色を除外した青,緑,赤の3種とした.なぜなら,青は寒色,赤は暖色の代表として残し,中間色である黄色と緑は,用意した写真を見て,影の映り方などによるイメージに違いが出にくいと思われる黄色を除外した.実験に使用する写真は,老人ホームに足を踏み入れた経験のない学生にも想像しうる居室と廊下とした.実際には12枚の写真を用意した.実験にはSD法を用いた.その一つ前の写真の影響を無くすため,居室6枚,廊下6枚を各々ランダムに提示した.そこで素直に浮かんだイメージを答えてもらった.SD法の評価項目は別の表(表1)として記載した.

表1 評価項目
評価項目

12枚の写真によって実験が行われたため,居室と廊下に分けて,それぞれ考えられる組合せによる比較を行った.色,天井の明暗による組合せを13通りずつ26パターン考えて,全部で26枚のイメージプロフィールを用意した.各々のイメージプロフィールの差の有無を調べ,居室と廊下,同じ組合せによる比較を行うために,分散分析を用いることにした.被験者75名,2枚の写真の比較であるため,2間配置の繰り返しのある場合の分散分析を行った.分散の見られた比較はt検定を行い,有意な差を有無に影響を与えたと思われる項目を断定して考察しようとした.

3. 結果

表2,3,4,5,6は,居室と廊下のそれぞれの比較の分散分析の結果である.○は分散が現れた比較であり,×は分散が現れなかった比較である.

表2 居室
分散分析結果(居室)

表3 廊下
分散分析結果(廊下)

表4 色(居室)
分散分析結果(居室の色)

表5 色(廊下)
分散分析結果(廊下の色)

表6 明るさ
分散分析結果(明るさ)

4. 考察

赤の絡んだ配色の組合せによる居室の比較になると100%,つまり,赤と青,赤と緑の組み合わせによる比較の結果は,天井の明るさを同じにした場合,人に違ったイメージを与えているのである.また,同色の組合せによる比較の場合は,青と青,緑と緑の組合せの比較の結果は分散が表れた.青と緑の場合は天井の明るさは,人に与えるイメージに大きな役割を果たしているということである.逆に赤という色は,天井の明るさの違いだけでは人に違ったイメージを与えることができないということであるが,他の色との比較になると確実に違ったイメージを与えるkとができるのである.では廊下の場合はどうであろうか.分散が現れた組合せは,天井の暗い青い廊下と赤との比較のみである.このことからも赤という色は,何か人に特別な意識を持たせる色なのではないだろうか.このことは,天井の明るさを無視した色だけの比較からもいえるのであろうか.結果を見ると,居室の場合は,やはり赤の絡んだ比較には分散が現れたのである.そして廊下には分散はあらわれなかった.

イメージプロフィールを手にしてみると,評価項目2と4における平均値の偏りに注目してみると,赤い色は居室廊下を問わず「どうてきな」であり,「あたたかい」であり,青になると「せいてきな」であり,「つめたい」という結果が得られているのに,緑になると居室では「つめたい」であったはずのイメージが,廊下では「あたたかい」イメージを人に与えているのである.実際にイメージプロフィールの色のみの比較を見ると,項目1と13の2項目で,赤になると,項目7と9の2項目となるのである.しかし緑になると,実に11項目も反対のイメージになってしまうのである.このことより,青や赤は使う場所による差はあまりないのかもしれないが,緑には大きな差があるような気がする.

色を考慮しないで明るさのみの比較の結果から言えることは,居室の場合,天井が明るくても暗くても,「ようきな」であり,「くらい」であったのに対して,廊下においては「いんきな」であり,「あかるい」であったということと,居室の天井が明るい場合,つまり床が暗い場合は「きたない」というイメージを与えていることがわかった.

5. 結論

室内装飾を赤にした場合では,他の色と比較した場合,ある一定のイメージを与えているようである.これは,天井の明るさには関係がみられないようであり,居室においても同じような傾向にありそうである.

青にした場合,居室に使っても廊下に使っても同じイメージを与えているようである.天井の明るさによる変化は同じ色の比較では違いが見られた.

緑の場合は別である.居室と廊下,使われる場所によってイメージが違うことがわかった.天井の明るさによる変化は同じ色の比較では違いが見られた.


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